オリコンの年間チャート、AKB48がTOP5独占とか、AKB系・ジャニ系・K-POPで大部分とか、シングルチャートの方が非常に話題になっていますが、アルバムチャートでもひとつ大きなポイントがあります。
シングルがAKBのミリオン連発で盛り上がる中、アルバムはミリオンセラーが消滅しました。1位の嵐で908,000枚。2位のAKBが830,000枚。年間アルバムチャートでミリオンがなかったのは1988年以来23年ぶりのこと。けっこうでかい出来事だと思うんですけど、ニュース的にはあんまりしょんぼりしたことは言いたくないのでしょうか。
ということでその23年間の年間アルバムチャートを比較。
年 | 1位 | 1位売上 | ミリオン数 | 50位売上 | 100位売上 |
1988 | 光GENJI / 光GENJI | 910,000 | 0 | 195,000 | 97,000 |
1989 | 松任谷由実 / Delight Slight Light KISS | 1,580,000 | 1 | 231,000 | 115,000 |
1990 | 松任谷由実 / LOVE WARS | 1,612,000 | 2 | 261,000 | 129,000 |
1991 | 松任谷由実 / 天国のドア | 1,975,000 | 6 | 362,000 | 159,000 |
1992 | CHAGE & ASKA / スーパー・ベストII | 2,543,000 | 14 | 329,000 | 184,000 |
1993 | ZARD / 揺れる想い | 1,938,000 | 8 | 317,000 | 181,000 |
1994 | DREAMS COME TRUE / MAGIC | 2,584,000 | 8 | 325,000 | 180,000 |
1995 | DREAMS COME TRUE / DELICIOUS | 2,910,000 | 14 | 487,000 | 231,000 |
1996 | globe / globe | 3,763,000 | 21 | 546,000 | 248,000 |
1997 | GLAY / REVIEW〜BEST OF GLAY | 2,910,000 | 21 | 383,000 | 216,000 |
1998 | B'z / B'z The Best "Pleasure" | 5,035,000 | 25 | 510,000 | 236,000 |
1999 | 宇多田ヒカル / First Love | 7,366,000 | 22 | 584,000 | 239,000 |
2000 | 倉木麻衣 / delicious way | 3,452,000 | 15 | 427,000 | 201,000 |
2001 | 宇多田ヒカル / Distance | 4,404,000 | 22 | 434,000 | 214,000 |
2002 | 宇多田ヒカル / Deep River | 3,527,000 | 7 | 373,000 | 208,000 |
2003 | Chemistry / Second to None | 2,002,000 | 7 | 258,000 | 163,000 |
2004 | 宇多田ヒカル / SINGLE COLLECTION VOL.1 | 2,500,000 | 6 | 284,000 | 159,000 |
2005 | ORANGE RANGE / musiQ | 2,631,000 | 10 | 263,000 | 148,000 |
2006 | 平井堅 / 歌バカ | 2,071,000 | 6 | 251,000 | 133,000 |
2007 | Mr. Children / HOME | 1,181,000 | 2 | 212,000 | 118,000 |
2008 | EXILE / EXILE LOVE | 1,471,000 | 4 | 217,000 | 113,000 |
2009 | 嵐 / All the BEST 1999-2009 | 1,433,000 | 3 | 162,000 | 87,000 |
2010 | 嵐 / 僕の見ている風景 | 1,053,000 | 1 | 150,000 | 81,000 |
2011 | 嵐 / Beautiful World | 908,000 | 0 | 130,000 | 67,000 |
1990年から1996年あたりはCDが普及し、音楽が一般消費財化していく過程。2000年前後にCDバブルがピークに達し、2002年から2004年にかけてゆるゆると下がっていき、2004年に着うたフルが出てきたあたりからガクッと来て2007年辺りまでにシオシオに。それ以降も漸減を続けて今に至ると。
で、この年間1位アルバムだけ見てても、音楽業界の迷走が見えてきます。
宇多田、Chemistry、ORANGE RANGEあたりまでは若いミュージシャンがどかっと売れてこういう位置まで来ていたものが、2006年になるとデビュー10年の平井堅、2007年にはミスチルと、ベテランがこの位置に来るようになります。要するに若い未知な人に大プロモーションをかけるという「博打」が打てなくなり、「堅い」ベテラン勢の売上をより最大化する作戦へのシフト。嵐が3年連続で取ってることから、徐々にそれら「固い」はずだったミュージシャンも疲弊し始め、もう思うように売れなくなっていることがわかります。
その弊害は1988年と2011年の最大の違いが「50位の売上」「100位の売上」でも見えてきます。2011年の方がガックリ減っていますが、つまりこれ裾野が狭まっているということ。売れるものは売れても売れないものは売れないという状況が顕著になっているということです。
プロモーションで何とか惹きつけないと振り向かない人が増えている。着うたフルの普及で若いリスナーがアルバム単位で音楽に接触する機会を失い、それ以降「新しい世代」は着うたフルは売れてもCDまでその勢いが及ばないという状況で、着うたフルもここ数年は漸減傾向、そもそも音楽を欲する若者が減ってきている。
もうアルバムまでたどり着く若者が増えることはないでしょう。ベテランとそのファンの高齢化に伴い、アルバム文化も徐々に死んでいくわけですよ。
そう考えてみると、AKB48の昨年のアルバムが「オリジナルアルバム」と呼ぶにはあまりにいびつな作りで驚いたんですが、あれこそが「主に単体で聴く」今の層に向けたアルバムとして最適化された形なのかもしれないっすね。ビートルズ以前の洋楽のアルバムは「シングル楽曲+カバー曲とかのおまけ楽曲」みたいな作りが多かったのですが、これからのアルバムはきっとまたそこに近づいていくんです。