第74回紅白歌合戦の歌唱曲のこと

今日、紅白の曲順が出たわけですが、一旦無視して歌唱曲について。
例年行っている、歌唱曲のリリース年とCD(レコード)売上を。
アルバム楽曲、C/W曲、配信のみの場合はその旨書いていますが、さすがにCD売上だともう見えないところも多いので、
「#」の後の数字はビルボードHot100の年間順位、一番右の枠には同じくビルボードの「年間アーティスト100」の順位を入れてみました。
MAN WITH AMISSIONとmiletは、歌唱曲がそれなので、「MAN WITH AMISSION×milet」名義の順位で。

毎度言っていますが「老若男女に広く親しまれている今年のヒット曲」なんてものはもうこの世に存在していない、ということは前提。

それを踏まえて、元々は「今年売れた曲が一堂に会する場所」であった紅白歌合戦ですが、実はずっときちんと「売れている」人を連れてきているわけです。割と。
ビルボードの「アーティスト100」は、CDからDLからストリーミングからの総合で「最も売れている人」のランキングになっているわけですが、ベスト5のうち4人は連れてきています(入ってないのは4位のVaundy)。

CDを売っている人も連れてきているし、テレビでよく見る人もネットで人気の人もいるし、演歌のスターもいるし、70年代のアイドルも80年代のアイドル的存在も、Z世代に受けている人もいる。
そういう各所でヒットしている人たちを満遍なくチョイスした結果、全体としてものすごく中途半端になるわけです。
ただ、もうNHKとしてはそういうやり方を選択するしかない、ということも理解できます。

というか、こうやって俯瞰してみて、1ジャンルを見たときに一番中途半端なのは演歌勢じゃないかと思います。
正味、現在に至る演歌という音楽は、既にGSやフォークもあった時代にできあがった歌謡曲の1ジャンルに過ぎないわけで、ファンのコア層は70歳台後半以上でしょう。
1970年に20歳だった人は今年73歳。GSやフォーク、その後に続くニューミュージックのファンという方がむしろ多いかもしれません。

で、その頃演歌を好きで聴いていた人で、今も「演歌」というジャンルを好んで聴き続け、新たにデビューする若手もキャッチアップしています、という人がどれだけいるのかと考えると、そんなのもう一握りもいない。
そんな「演歌世代」にとってのスターであったサブちゃんも五木ひろしも森進一も都はるみも退場した今、恐らく石川さゆりが最後の牙城。
そりゃ「津軽海峡・冬景色」と「天城越え」のローテーションにもなります。
「ダメ男数え唄」を歌うという選択肢は、「彼女が何故出場するのか」を考えれば、そもそもあり得ないでしょう。

そして彼女以外の演歌勢は、とりあえずジャンルとして確認できるくらい残ってはいるものの、カバーを歌うとか、凝った衣装とか、けん玉とか、本質ではないところで訴求するしかないのですが、そうやって印象付けて「知っている人が歌を歌う」という環境を作っていくしか、もうやりようがないというか。
男性演歌・歌謡曲ジャンルで2023年に最も売れたのは純烈で、次は山内惠介ですが、その次は真田ナオキ。個人的には彼に出場してほしくてたまらないのですが、紅白において最も大切なのは「知っている演歌の人が出ている」ことなので、彼が出ることは今後爆発的なヒットを飛ばす以外にないと思います。

正直なところ、演歌全盛期を支えた大御所の作詞家作曲家の先生方がおよそ鬼籍に入る頃には、ジャンルとしての演歌勢も紅白からいなくなってしまうのではないか、と考えます。
紅白が今のままいられる限界とどっちが先か、という気もしなくはないですが。

ということで真田ナオキの今年の勝負曲「酔えねぇよ!」、爆発的に売れてほしいです。

<12/27追記>
表、MISAMOが抜けていましたので追加しました。