lynch.@日本武道館のライブのこと

lynch.はV系フェスの時に観たきりだったので、先日悠介のサイドプロジェクトの健康を観た身として「そっち観て本体をきちんと観ていない状態は健全ではないのでは」との判断のもと、昨日23日は日本武道館。

そもそも彼らがこの日、日本武道館のステージに立つまでがすごく大変でして。
彼らにとって初武道館ではありますが、実際には3度目の正直。予定が決まっていたにもかかわらず2回中止を食らっています。

1度目はメンバーの不祥事での中止。
しかしそこで脱退・メンバー交代を選択せず、活動一時休止と4人での活動の後に復帰。不祥事前後でメンバー不動の状態で復活するという、日本のメジャー史上では自分が確認できた限り2番目の快挙(最初はBUCK-TICK、3番目は電気グルーヴ)を成し遂げます。

2度目はコロナの影響で直前で中止。
その後にはバンドの判断で約1年の一時活動休止を挟むことになり、休止明け後最初のライブが遂にこの日本武道館という、かなり熱い状態ではあったのですが。

それでも、日本武道館ってたどり着くのも大変だけど、実際演るのもけっこう難しい会場だと思っていて、実力不足のままうっかりたどり着いてしまったバンド・グループの初武道館公演で、あの天井の高い場全体に「空気」を行き渡らせることができないまま、割と空虚な感じのパフォーマンスが続く、という状況も観たことがあります。

が、彼らは圧倒的でした。
1曲目「LAST NITE」の出音一発で完全にlynch.を会場中に充満させてくる。完璧。

Vo.葉月以外の楽器隊はさしてフロアを煽ることもなく、演奏する姿を見る限りでは淡々というか飄々とした風情すら感じさせるのに、実際出てくる音は分厚く鋭い音の壁。
この感覚に過去一番近いのは何だったろうかと思い返したら、東京ドームで観たLUNA SEAだった。そういう比較対象しか思いつかないくらいのエゲツなさ。

葉月はヴォーカルのみならず、MCも最強で。でも「MC能力が高い」と言うより「フロアとのコミュニケーションレベルがMAX」と言った方がしっくりくる、ただ面白いこと、素敵なことを言うだけではなく、その時その時の場の空気に寄り添う感じの言葉を飾り気なく発していくのがすごくかっこいい。天性の「人たらし」感を感じました。
ていうかアンコールの時、「日本武道館祈願」のダルマに目を入れたのを本当に嬉しそうに掲げながら歌うの何。そんなん男でも惚れるわ。ダルマ肩に乗せようとすんなよ。

そんな緩急も抜群、音の強烈さに慄いたりアガったり、MCでほっこりしたり各メンバーの「武道館への思い」で泣きそうになったり、気が付いたら3時間以上。ものすごく濃密な時間でした。

00.SE-AVANTGARDE-  
01.LAST NITE  
02.GALLOWS  
03.GREED
04.EVOKE  
05.CREATURE  
06.XERO  
07.THE FATAL HOUR HAS COME
08.JUDGEMENT  
09.GHOST
10.LIE
11.melt
12.forgiven
13.ASTER
14.D.A.R.K.
15.I'm sick, b'cuz luv u.
16.MIRRORS
17.ALL THIS I'LL GIVE YOU
18.INVADER ×1.5ver.
19.OBVIOUS
20.pulse_
21.ALLIVE
22.CULTIC MY EXECUTION

EN1-1.THIRTEEN
EN1-2.EVILLY
EN1-3.a grateful shit
EN1-4.MOON
EN1-5.EUREKA

EN2-1.ADORE
EN2-2.A GLEAM IN EYE

でも、lynch.ってよくわかんないんですよ、ジャンル的に。
「V系」というのは音楽スタイルを示すものではないので置いておくとして、ラウド系であることは間違いないのですが、普通のラウド系としてまとめてしまうにはメロがキャッチーすぎるし、葉月は普通にイケメンヴォーカルからデス声からビブラート利かせた変な高音から繰り出す凄まじいヴォーカリストですが、なのでスクリーモとかいわんや普通のEMOにも括れないし、割と置き場所のない、別の言い方をすれば唯一無二に近いスタイル。

それだからこそlynch.ではあるのですが、音楽的に「同系統のグループ」として括れるような他バンドも近くにあまりおらず、孤高のバンド的な立ち位置。
そういう状態で武道館にたどり着くのがそもそもすごいのですが、でもこんな音楽強度のバンドが非V系の界隈にはまだあまり知られていないことがあまりにももったいない。もっともっと聴かれていい。聴かれるべき。

とりあえず現場にいて、ガチV系バンドのライブには時々ある、他の観客と異なるアクションが嫌われる「悪目立ち禁止」的な空気は全くなく、男子もかなり多めな中で本当にみんなが自由に発せられる音を受け止められる、そんな環境だったので、あとは本当に広い層に「知られる」「見つかる」だけだと思いました。
過去ロッキンオンのフェスとか、ロットングラフィティ主催のポルノ超特急には出演しているようですが、残念ながらそこで認知が急拡大したという話は聞かず、でもこういう音楽が「見つかる」にはやっぱフェスしかないとも思うわけで。

終演後の中華料理屋で仲間のバンギャの皆様とハイボールをおかわりしながら検討を重ねた結果、今後lynch.が「見つかる」にあたって最適な場はVIVA LA ROCKではないかとの結論に達しました。いや可能であれば。
メディアを持っていることと、日本の大型フェスの中でほぼ唯一、ダイブ&モッシュ(左右に動くのではないガチのヤツ)がOKなフェスであること(近年はコロナでNGですが)。

2019年のVIVA LA ROCK、割と孤高的な立ち位置だったUVERworldが出演し、途中でそこまでの流れをぶった切ってマキシマム ザ ホルモンの「恋のメガラバ」をゴリッゴリにカバーし始めた時、そこにダイスケはんとナヲが「ご本人登場」状態でステージに現れた時、そしてそれに呼応してさいたまアリーナ中がものすごい勢いで沸いた時、UVERworldは孤高ではなくなったという感じがすごくしたのですが、そういうの。
仲間を増やし、認知を増やし、ファンを増やしていってほしいのです。今の枠の外に。

「フェス的なノリ」にアジャストしようと頑張ってますレベルの若いバンドなんぞワンパンで殺せるレベルの音楽的屈強さですので、ずいずい出張っていって大量殺戮を行っていただきたい。
死なない強靭なバンド群やオーディエンスと音楽の拳で語り合って「お前もなかなかやるな」みたいな状況が見たい。
初見のフェス野郎オーディエンスたちを感極まらせてがんがんダイブ&モッシュを行って転げ回っていただくことで、バンドも古くからのバンギャの皆様もいろんな新たな景色を見ることができるのではないかと、そう思うのです。

実際そういう音楽なんだって。
葉月も暴れろって言ってたけど、日本武道館ではルールとして無理とはいえ、昨日そこで鳴っていたのは、ヘドバンとか咲くとかよりもっと本格的に物理的に徹底的に暴れられるやべえ音楽なんですよ。
私はそういうlynch.の現場を時々でいいのでとても観たいと思いました。

というわけで、まずはMUSICA誌への出稿から、是非お願いしたいところです。