TSUTAYAのフランチャイジーのこと

前回でTSUTAYAの閉店が相変わらずなのは確認できたとして、最大手フランチャイジーのひとつであるトップカルチャーは2023年目途でレンタルをやめることを公表しています。
そこで気になるのは、展開する店舗のうち9割はフランチャイズ、直営は1割程度のTSUTAYA/蔦屋書店で、他のフランチャイジーはどういう感じやねんということ。
まず、TSUTAYAのフランチャイジーにはどういう企業が参加しているかというあたりから確認。

■フランチャイズ屋
様々なブランドのフランチャイズ店舗を出すことがメイン業態という企業。
トップカルチャー(本社:新潟県)が代表例ですが、ただここは他にも古本市場の店舗を出したりもしていますが、ちょっと蔦屋書店に依りすぎの感も。
九州最大のフランチャイジーで、熊本の蔦屋書店 三年坂を運営している(株)ニューコワン(本社:熊本県)もこのカテゴリ。

■取り込まれた元同業者
元々はレンタル業におけるライバルだった地元のレンタルショップが、軍門に下ってTSUTAYA化したところ。
一時は業界3位だったサンホームビデオを経営していた(株)サンレジャー(本社:東京都)は、CCC傘下に入った後合併等を経て現在(株)Vidawayとして存続しています。
何故か一部店舗は「サンホームビデオ」のまま運営を続けていましたが、2020年3月に北海道士別市、2020年9月に岩手県北上市の店舗が閉店し、最後に残った北海道江別市の店舗もこの3月に閉店決定。

■書店系
元々純粋な書店だったチェーンがレンタルを導入するにあたってTSUTAYAのフランチャイズになったパターンもありますが、元々は独立してレンタルも営業していたのがCCCグループに入った「取り込まれた」系に近いものとの2種。
ただ、この後者の場合は「抗って負けた」というところはほとんどなく、CD/DVD販売・レンタル部門のノウハウをアウトソーシング的にCCCに頼ったという感じのところが多め。
(株)ブックエース(本社:茨城県)、文苑堂書店(本社:富山県)あたりは相当古くからのフランチャイジーです。

■スーパーマーケット/ホームセンター系
地元資本のスーパーやホームセンターが大型店舗等を出店する際に取扱い品種を多様化して集客性をより高めるために、TSUTAYAのフランチャイズ店舗も敷地内に出したりするパターン。
リオンドール(本社:福島県)、ひらせい(本社:新潟県)、オークワ(本社:和歌山県)、フジ(本社:愛媛県)あたりが大手。

■ガソリンスタンド系
割と多いのが、ガソリンスタンドを経営している企業が多角経営のためにこっちも手を出してみた感じのパターン。そもそもガソリンスタンドが古くから「出光」とか「昭和シェル」とかの看板で商売をしてきたフランチャイズ的な業態ですので相性もよく、店舗用地取得のノウハウを持っているところも強そう。
フタバ図書がTSUTAYA化する前から広島市内にあったTSUTAYAはだいたい大野石油店(本社:広島県)の運営です。

■交通系
神奈川中央交通や神姫バスが今もTSUTAYAを運営しています。現在はすべて閉店しましたが小田急電鉄の子会社の小田急商事が運営した例も。
駅構内や車庫等の事業用地を比較的持っているので、それの有効活用という側面もあると思います。

こんな感じですが、ホームページも持たないような企業が運営していたり、フランチャイジー同士で店舗の譲渡も割とあって、どの店舗がどの運営かということの全体像はなかなかわかりません。

f:id:wasteofpops:20210410175641j:plain
蔦屋書店 厚木戸室店(トップカルチャー・2021年5月閉店)

で、主なフランチャイジーの最近の動きですが。
まず、近々で具体的な動きがあったところから。

○トップカルチャー
2023年度中にレンタル事業からの撤退を表明
とはいえトップカルチャーの「蔦屋書店」名義の店舗は概ね相当な床面積を持つ大型店舗で、レンタル以外にもCD/DVDや書籍販売はもちろん、文房具・ゲーム・雑貨の販売までを行っていますので、今はそれなりのダメージにはなるとしても、今後下がり続けるであろうレンタルの売上を考えればこの判断は間違ってないと思います。

○ワンダーコーポレーション
WonderGOOを運営している企業、自前でCD/DVD販売まで行っていますが、レンタルについてはTSUTAYAのフランチャイジーとなって既存のWonderGOOの店内にTSUTAYAのレンタルを展開、「WonderGOO TSUTAYA」のダブル屋号状態で営業していました。
が、2021年後半からTSUTAYAレンタルを終了し、再び「WonderGOO」単独屋号に戻る動きが見られるようになり、今年に入っても止まりません。このペースで順番に閉じていったら下手したらトップカルチャーより先にTSUTAYAレンタル消滅するんちゃうか。

○フジ
愛媛県本社のスーパーマーケットですが、大規模店舗フジグラン内をメインにTSUTAYAを出店していました。
が、2019年に運営していたTSUTAYAの半数以上になる12店舗を突如放出開始、宮脇書店に譲渡してしまいました。この際レンタルを取り扱っていた店ではレンタル消滅。
残り店舗も昨年1店舗閉店し、安心はできません。

○ひぐち(遊ING)
長崎市内を中心にスーパー・パチンコ・飲食店等を運営する企業で、元々は独立したチェーンとして「遊ING」名義の店舗を運営していましたが、2011年にCCCのフランチャイジーに入り「TSUTAYA遊ING」になりました。
が、昨年6月に畝刈店が「店舗移転のため」「新店舗移転OPENは2022年春頃」という大変にざっくりしたアナウンスのみで閉店して不穏な空気を醸していましたが、先日浜町店が「2/28に移転のため一時閉店、4月上旬に『遊ING浜町店』としてオープン、取扱商品はBOOK・eスポーツ・ゲーム・トレカ」と、今度はわかりやすいアナウンスを出しまして。
読み取る限り、TSUTAYAのフランチャイジーだったDVD/CDのレンタル・販売部門を切り離して改めて「遊ING」単独名義に戻るということのようです。現状で「TSUTAYA遊ING」名義残り2店舗がどうなるかはまだ不明。


その他フランチャイジーで頑張ってたりしんどかったりするところ。

○Vidaway
元サンホームビデオの小規模店舗を多く抱えているわけですが、相当に踏ん張っています。50店舗以上を運営しているにもかかわらず、ここ数年で閉店した店舗はほとんどなし。
なのですが、2021年以降は八戸南類家店、五所川原小曲店、盛岡南店、和田町駅前店、東戸塚店と、割とコンスタントに閉じ始め、さっき言ったようにサンホームビデオ名義の店舗も完全消滅決定。限界突破したのかもしれません。

○FACE
会社設立間もない1980年代の段階でフランチャイジーになったFACE(本社:埼玉県)ですが、全盛期は30店舗近くを運営していたのが、2018年以降で10店舗以上閉店しておりまして、割と大変そうです。
創業店でもある埼玉県朝霞市のみはら店の動向が気になります。

○ブラス
南関東を中心にTSUTAYAを展開していたブラスメディアとMeLTSとすばる書店のTSUTAYA事業部門が合併して新会社ブラス(株)となったのが2014年。
もうこの時点で本社機能等を集約してコスト削減したれという気持ち満々なのがわかりますが、そのおかげか合併直後数年はさして閉店する店舗も少なめで頑張っていました。
それでも、2020年以降閉店ペースが若干増えているような気がします。とはいえ50店舗近くを保ち、半ば移転とはいえ昨年9月の段階でTSUTAYAの新店をオープンさせていたりと気を吐いています。

○アクト・ティ
元々は秋葉原の店舗を運営する(株)クォークとともに「リバティー」名義の店舗を運営していたアクト・ティ(本社:東京都)ですが、21世紀になってから屋号をTSUTAYAに集約。
そのTSUTAYAも5年前までは10店舗あったのが少しずつ削られて、現在4店舗。
都心にSHIBUYA TSUTAYA(直営)と共に残ったレンタル拠点、池袋ロサ店の運営はここですので、応援しよう。


先刻述べた小田急商事(The New's TSUTAYA名義)や岐阜県の自由書房(TSUTAYAファミリークラブ名義)は完全にTSUTAYAから撤収、秋田県の高桑書店は2018年にTSUTAYAを含む書店事業を譲渡して翌年には倒産と、完全撤退するフランチャイジーも少なくなく、他のフランチャイジーも当然ですが予断を許しません。

先に並べた企業のうち、ガソリンスタンド系や交通系は、正味本業の今後がなかなか厳しいところも少なくなく、本業をサポートできるレベルの売上がなければ撤収するのもやむなしでしょう。
当然ですが書店系も楽ではないでしょうし、フランチャイズ屋も他にどういう業態を持っているかでも大変さは異なります。そして当然ですが各社どういう経営をしているか。

そんな感じで、当面頑張れそうなところと最早ギリギリなところとの差は大きく、ある地域一帯がひとつのフランチャイジーに寡占されている地域もけっこうあるという点を併せて考えると、今後ますます店舗所在の地域差が大きくなっていき、そして更にその時期を越えるとだいたいどの地域からもなくなる、という順序で進んでいきそうです。