眉村ちあき@日本武道館のライブのこと

昨日は眉村ちあきのライブ@日本武道館。

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彼女のワンマン、過去に観たのはロフトとスタジオコースト。
今回は日本武道館とはいえ、座席は市松での設定で定員の半分以下。ただそれでも間違いなく彼女の最高動員によるワンマンライブ。

もしかしてセンターステージじゃないの、とか思っていたのですが、実際入ってみたら通常通りの北位置へのステージ建て込みで、かつ植物っぽいのとか鉱物っぽいのとか、予想以上にセットは凝っていました。
でも実際全体としては照明以外の飛び道具的な演出は、過去に観たワンマンよりは抑え気味くらいではありました。
風船を割るためだけに吉田豪氏を召喚したり、クリトリック・リスをただ宙吊りにして放置したりする無茶もない。

それでも開始すぐにお母さんをゴンドラに乗せて会場中を回らせてステージ上以上に注目させてみたり、およそおっさんたちは声出せない中、ポジの表明は拍手、ネガの表明は足踏みという場内限定の謎ルールを制定するような流れに持っていったり、場全体を使っての「いじり」は過去最強。
志村けん的な仕掛けを組み込んで、親子シートの子供たちのみに「あっち!あっち!」と叫ばせる段に至っては、このためだけに親子シートを設定したのではないかと疑わざるを得ないレベル。

ただ、もうそれは完全に余興というかおまけというか、盛り上がりの本質ではなく、ただもう彼女の歌が素晴らしく。

武道館でのライブ、ここまで様々なミュージシャンを観てきましたが、ちょっと無理して初武道館という人の中には、結果としてその場を作れない方々もいらっしゃいました。
天井の高いあの会場で、明らかに「熱」が届き切っていないというか、場の空気を満たせないままライブが終わってしまったミュージシャンもたまに観たりしたわけです。
それが彼女の場合、「熱」が足りるの足りないのそんなの気になる以前にさくっと場を作ってしまっていて。

それが何か特別なことをした結果かというとそうでもなく、ただ眉村ちあきがいつも通りの眉村ちあきのパフォーマンスを行っているだけで、そうなっている。彼女の場合そもそもロフトの時を思い出すに、あの時点で明らかにロフトの枠を大幅にはみ出るレベルのライブを行っていたことは間違いないのですが、この武道館のそれは奇跡だったのか、当然の結果だったのかも正味よくわからない。
ただ今回そうなったのか元からなのか、武道館クラスの箱に見合うだけのパフォーマンスを余裕でかましていたことだけは事実。

しかも今回はニューアルバムのタイトルがまんまライブのタイトルになっている、言ってみればレコ発的な位置付けのライブで、実際ニューアルバムの楽曲を山ほど演ったのですが、その分過去曲少な目、特にいくつかあった「アゲ曲」的な、ライブの盛り上げ的には重要な位置付けだったはずの楽曲の多くが、穏やかな感じにリアレンジされたり、弾き語りのメドレーの中で一節だけ歌われたりで終了させる等、過去ライブの予定調和的な盛り上がりの期待をほぼ排してのそれ。

それでも全く問題なく、その場全体が、華やかだったり賑やかだったり穏やかだったりちょっとブルーだったり、彼女の歌うがままに満たされていくのです。
これは「技術」なのか、彼女の持って生まれたものなのか、その両方か、どっちでもないのか。
相変わらずよくわからないのだけど、ただ唯一無二のライブであったなあ、ということは彼女を生で観るたびに思うのです。

だからテレビとかで観てあのキャラは無理、とかいう人でなければ一度ライブを観ればいいと思うのです。
何か、他の誰のライブとも違う感覚は感じていただけるのではないかと。
つうか、もっと人呼んで、スタジアムクラスで相変わらずのスタンスでライブをする彼女が観たいんですよ。協力してくれよ。


ちなみに、改装後の日本武道館に初めて足を踏み入れたのですが、思ったよりよくなっていた。ここは一般的な用法としては「武道の試合場」ではなくむしろ「ライブ会場」であるということに、遂に本人が自覚的になった感があります。特に椅子が改善されているのが嬉しい。
これで首都圏ライブ会場のクソ座席ナンバーワンは東京ドーム一択となりました。
逆にライブ会場最強の座席は、渋谷マウントレイニアホール。全部のライブをあそこでしてほしい。