日本のミュージシャンのオリジナルアルバムに「11曲収録」が多いことにずっとモヤモヤしているのです。
ここ数年は減少傾向なのですが、それでも多い。特にまだ自分で音源制作のイニシアチブを完全に握れていない若手やあんまり売れてない方々に多い印象。
たとえば都合のいい例を持ってきますとスピッツ。
1.スピッツ:12曲
2.名前をつけてやる:11曲
3.惑星のかけら:11曲
4.Crispy!:10曲
5.空の飛び方:11曲
6.ハチミツ:11曲
7.インディゴ地平線:12曲
8.フェイクファー:12曲
9.ハヤブサ:14曲
10.三日月ロック:13曲
11.スーベニア:13曲
12.さざなみCD:13曲
13.とげまる:14曲
14.小さな生き物:13曲(通常盤)
15.醒めない:14曲
ヒットして経験も積み、アルバム制作の些末までレコード会社ではなくバンドが完全に主導権を持つことができるようになったあたり以降11曲入りはなくなっています。
ミスチルは最初のフルアルバムだった「Kind of Love」以降、11曲入りは「DISCOVERY」と「[(an imitation) blood orange]」の2枚。
B'zは最初にヒットしたアルバム「BREAK THROUGH」と、それ以降は「Brotherhood」だけ。その代りに「BREAK THROUGH」直後の3枚や、最近では2013年の「EPIC DAY」あたりでLPレコードを意識した感じの10曲入りのこだわりを見せています。
で、何でモヤモヤするかというと、「11曲収録」が定着した過程を推測してみるとあんまり楽しい気持ちになれないんですよ。
B'zがこだわったようにLPレコード時代は日本の70年代以降の大衆音楽では10曲収録がおよその標準。これはLP片面の収録可能時間が標準レベルで録音すると22-23分程度であり、1曲の長さがおよそ3分台後半から5分程度になった時代、平均して4分強程度であれば必然的にその曲数になる、という物理的な制限から生じたものですから、もう如何ともし難い。
それが、CDというフォーマットが広がり始め、LPレコードと併売されるようになった際、LPレコードはだいたい2800円のところ、CDは3200円という価格設定となりました。そしてその割高感を払拭するために、収録時間の長さを生かした「CDのみボーナストラック収録で合計11曲入り」という事例が多発します。
そりゃあんた、ファンなら聴きたいですからCD買います。そうやってCDが普及していったことは間違いなく、そうすること自体には異論はないのですが、問題はその後。
LPレコードが縮小して通常発売されなくなり、フォーマット自体が滅びかけ、でもここ数年また見直されてリリース点数も売り上げも増えてきた、とそれだけの変遷を経てきた中で、「CDフルアルバムは標準で11曲入り」というのがまだ何で根強く残ってるの、という話です。
単に制作上の慣習が何らアップデートされることなく残っているだけなのか、何か他ののっぴきならん理由があるのか、正味わかりませんが、何となく業界の「旧態依然」感をそこに強く感じてしまうのです。
レコード会社、様々な戦略上価格設定については随分柔軟になったと思います。ベテランミュージシャンの方の中には価格が上の方に柔軟性ありがちな時もあったりしてやや困ったりもするのですが。
そこらへん、お金にかかわるところ以外ももっといろいろやっていいんじゃないかと、勝手な推測のもとに申し上げる次第です。
サブスクで好き勝手に聴いたり曲単体を購入したりが当たり前の世の中で、アルバムというフォーマット自体に先がないやんけ、と言われたら、もうグウの音も出ません。