2016年VIVA LA ROCKのこと

28日、29日は3度目のVIVA LA ROCK。
去年までは家とスーパーアリーナを3往復していたわけですが、去年の3日目行く朝さすがにしんどくて心が折れそうになったので、今回は2日間開催にもかかわらず南浦和駅近くのホテルを押さえて万全の体制。大人はお金で解決します。
1日目が終わった後、仲間と散々飲んで日が変わる直前くらいにホテルに入り、朝8時まで寝てホテルで朝飯食って部屋戻って二度寝して、9時半前にチェックアウトして10時前には会場入りできる。快適過ぎて鼻水出る。もう元の生活には戻れそうにないので、来年は予約取れるようになったら即ゴールデンウイークのホテル押さえにかかります。

で、観たヤツ。

■1日目

・フレデリック
ずっと観たかったんだけど、去年は入場規制かかって観られなくてようやく。音源ではウィットに富んでかつ飄々とした空気のある楽曲が並ぶわけですが、ライブになるとこれ暑苦しいこと暑苦しいこと。多用しているはずのシーケンスもほとんど鳴らずギターで代わりにその音出してたりする。つまりはライブバンドとして概ね最高。
それでも観ていて、彼らの命題はうっかりできてしまった稀代のポップソング「オドループ」をいかに越えていくか、だとひしひしと感じました。本当に素晴らしい曲だけに。

・NICO Touches the Walls
考えてみたら初見。メジャーまで行ってかつそこそこ以上の人気を得ているバンドの中ではずば抜けてギミックを持っていないというか、わかりやすい特徴のない音を出しているというのがこれまでの彼らへの感想だったのですが、わかった。バンドとしての基本性能が異常なレベルなのでした。そりゃここまでくらいは行くのも納得レベルで。
それでも今ここ止まりなので、あとはとんでもなく素晴らしくフックの効いたメロディを持つ名曲書くだけ。頑張ってほしい。

・LILI LIMIT
初見。音源が非常に端正なので、まあそんなもんだろうと思って行ったら全然違った。彼らも間違いなくライブバンド。あの音がダイナミズムでもって出てくるのはなかなかにスリリングです。
あと、ヴォーカル&ギターの彼のギターの位置は何故あんなに高いのでしょうか。V系バンドR指定のギターの人くらい高いよ。

・BLUE ENCOUNT
2回目。前と同様に速くて熱いんだけど、前はもう伸び盛りもいいところでただ突っ走っていた感があったんだけど、今回はそろそろ「フェスの人気者」として行くところまで行った感もあり、正直ここから先どうするんだろうかと思いました。でも何か彼ら自身が「その先」を模索しているようにも見えて、まだまだこれから変わっていくのだなとも思って。
ただ、タイアップのシングルのあの曲は正直、悪手だと思います。そういう曲でテレビ出たところで持ち味とか伝わらんでしょうよ。

・シナリオアート
どうしようもないくらいナイーブな歌詞とドラムのクミコちゃんの可愛さが気になってアルバムまで買ったりしていたのですが、ようやくライブ観た。こいつらもかなり高レベルにライブバンド。ていうか無茶苦茶うまい。何でそんなドラム叩きながら時には7拍子とかかましながら歌えるんだ。
演奏を観た時点でただでさえ高い好感度5割増しだったのですが、MCに入った途端、声は可愛いんだけどイントネーションは完全に「関西のおばはん」状態で喋り倒す彼女に、さらに好感度2割上乗せ。ワンマンに行こう。

・ぼくのりりっくのぼうよみ
これは絶対観に行かないといけないと思い、早めに入ったのが大正解。開演前には入場規制かかっていた模様の超満員。
本当に音源の通りの声。ものすごくうまい。うまいのだけど、ラップさせるよりもむしろもっときちんと歌わせてみたい声。声を伸ばす時の微妙な震えや声の耳ざわりの効果で、歌詞がすごくダイレクトに入ってくる感じ。
すごく安易なのはわかっているのだけど、その声すごく宇多田ヒカルの声の特徴に似ていると思うのですよ。ああいうふうに歌わせたいんですよ。彼も。

・ゲスの極み乙女。
ゲスな気持ちで観てみました。彼らを初めて観たのは代官山UNITだったんですけど、当時そのサイズの箱にきちんと収まっていたはずの楽曲が、今回ちゃんとアリーナのデカいサイズに合うレベルで「大きな」空気感を持っているのがわかって、本当に彼らはきちんと成長してここまでのバンドになったのだなと。
で、ゲスな観察の方で行くと、「コポゥ」ネタは健在なれど、いこかちゃんと課長による愛の告白とかの小芝居は廃止された模様。まあ、わかる。

・凛として時雨
よく考えてみたら前に観たの「Feeling Your UFO」の頃だからかれこれ10年ぶりくらいか。彼らは変わってない。何も変わってない。相変わらずTKの声高過ぎて、「男女ツインヴォーカル」の看板でやるには声のトーンほぼ同じじゃないかと思うところまで変わらない。
彼らの場合、もちろん成長はしてるのだけど、それ以上に環境の方が彼らにアジャストしてきた感じがする。セールス以上に以降のバンドに影響与えてるし、その環境の変化は間違いなく彼らに起因するのだけど。アメリカにおけるDepeche Mode的な位置。
あと、3人を観るのは久しぶりだけど、ピエール中野だけはやたら観ていることにも気が付いた。

・サカナクション
フェスに彼らが出ている場合、よほどのことがない限り万難を排して観るようにしています。演奏が素晴らしいのは当然ですが、観るたびに何かしら新しい演出を導入していて、何度観ても恐ろしいほどの満足度を提供してくるので。今回も例のMacBook並べての登場からその後いろいろ新機軸があり、もう「ショー」として極まりつつあるなあと思いました。全体としてはこれがベスト・アクトです。


■2日目

・HEY-SMITH
もうこういうパンクスカコア系の音には全く付いていけなくなっているのですが、観たら観たでやっぱり気持ちはアガる。特に彼らは6人編成にしてラッパ類3本標準装備ですから、やっぱ滅茶苦茶かっこいい。上半身裸でサックス振り回しているメンバーを見て、何となくLA-PPISCHのMAGUMIさんを思い出した。僕らのあの頃のあの音が、今の子たちにとってのこの音なんだろうな。

・04 Limited Sazabys
彼らが今一番伸び盛りの「フェスの人気者」であることは間違いないと思います。他バンドよりもライトな空気感を持ちつつ、でもきっちりうるさくて速い。
ただ、ブルエン観た後だから思うのかもしれないんだけど、あと1-2年後、フェス人気が伸び切った後どうすんだろうというオプション的なものが今はまだ全く見えない。でもこういう音やってるんだから、先のこと計算するような空気出したらそれはそれで魅力半減なのかもしれません。今はただ、もう少し上目指せばいいのかも。動員的にも来年はアリーナ行けるかもしれません。もう一声。

・パノラマパナマタウン
もうひしひしと「俺ら洋楽好きっす」っていうのが伝わってくる音。つうか幕前にSUEDEとか流してたし。それで演奏もきっちりしてるから悪いところないんですけど、MCであからさまな上昇志向を口にしていて、正直それならこの音では駄目だろうとも思いました。
日本のバンドが売れるには、いかに洋楽的なものを元にしつつドメスティックに、もっと端的に言えば「歌謡曲的に」翻訳できるかがカギで、その能力が高いバンドが勝ち切っているわけで。キャロル、サザンは言うに及ばず、BOOWYからブルーハーツからジュディマリから、今回アリーナの方に出ているバンドの相当数も。
正直なところ彼らは、90年代のロッキンオンに載っていたような洋楽バンドの数々からの影響はすごく見えても、「翻訳」する気はなさげなので。これからどうしていくのだろうか。

・キュウソネコカミ
何か観ちゃう。他のバンドなら「全力」に見えるはずの数々が、彼らがやると「生き急いでいる」ようにしか見えないのは何故だろう。「フェス系」と括ってしまえるような音楽の中で、彼らだけ無闇に異質なのは何故だろう。よくわからないのだけど、様々な音楽が氾濫している今のこの状況の中で「孤高」とも言えるポジションを手にしている数少ない若手バンドであることは間違いないのです。
新曲はもう揶揄とかネタ化とか一切ないどストレートな歌詞。穿っているようでいて間違いなく特定の層には深く刺さるメッセージ性が今後はより強力になりそうです。いつ消えるかと思っていたときもあったけど、もしかしたらこの世代の中で一番「残す」のは彼らかもしれない。

・kidori kidori
CD聴いて何となく好きだったから行ったらもっと好きになった。日本のバンドではもう希少生息種の「リフで持っていく」バンド。かっこよくないはずがないでしょうよ。
彼らも非常に洋楽的というか、まあ帰国子女だからそうなるのは当然なんだけど英詞メイン、最近は日本語詞も増えましたが、でも根本的なこういう音を鳴らすのだという部分の「腹が決まっている」感も非常によく伝わってきまして、全くブレがない感じ。彼らは売れようが売れまいがこのままでいると思うし、だから、信頼したい。

・MONOEYES
もう3回目。毎回楽しい。こういうパンク的な要素が入る音楽の場合、多少なりともわちゃわちゃした空気になるのですが、彼らは全くならない。パンク的な音楽は技術が高くなくてもできるし、そこが素晴らしいところでもあるんだけど、技術高いのがよってたかってそういう音をやると、ここまで腰が据わり、地に足が付いた音になるのだという恐ろしさ。若いのがかわいそうになるレベル。

・ストレイテナー
で、彼らも言ってしまえば、技術高いのがよってたかってやたらに腰が据わって地に足が付いた音をやるバンドなわけですが、それがもろパンクという方向に行かずに彼らのようなベクトルに向かうと、何で4人なのにこんなぶっとい音になるねんという感じになる。
今回は全部新作からという攻めと呼ぶには無謀すぎるセットリストで臨んできましたが、元々彼らをよく知らない若い子たちに「パンク的なベクトルではない」凄い音もあるのだということを提示する気だったのだとしたら、それはむしろ正解なのかもしれない。

・UNISON SQUARE GARDEN
元々器用にいろんなタイプの音を作れるバンドではあるのだけれど、タイアップのああいうタイプのあの曲が馬鹿売れしたことは、長期的な視点で考えた場合必ずしもいいことだけではないのではないかと思っていたところがありまして。
でも「何らかのバンドの方向性にも影響を与えたりしたら」みたいな考えをきれいに一掃してくれるハードな新曲こさえて披露してくれたので、ものすごく杞憂でした。ブレてないわ。

・10-FEET
毎回言いますが、タクマくんになら抱かれてもいい。かっこいい。
でももう20年選手のこのバンドがこのレベルでやらかしてたら、若いの上がってこられねえ。でもいなくなって相対的にどっかのバンドが上がってきたところでその穴埋められるレベルの若手がいないという強烈なプレゼンス、技術、熱。パンクはもうしんどいとさっき言いましたが、彼らはもう大好きなんです。今年のタクマくんの名言は「DEAD POP FESTiVAL 2016にようこそ!」でした。

・星野源
突如フェスではなく「コンサート」になった。曲毎の深いお辞儀、煽らないきちんとしたトークMC、掛け合いで聞こえてくるアリーナの女子の黄色い声。ギタリストは鈴木茂。すごい昭和感。それでも他のバンドが一気に体温を上げるような感じのが続いていた中で、ゆっくり少しずつ体温上がっていく感覚はこの2日間で唯一。こういうのも間違いなく「技術」のなせる技であり、かつこういう技術は今普通にバンドやってたら身に付けようがないものでもあると思うので、すごく貴重な体験だと思います。
MCで「星野源はちんこがでかい」と広めてほしいと言っていたので、星野源はちんこがでかいです。

以上、フェス全体の諸々はこの次で。