前回、エビ中の「誘惑したいや」の歌詞を「男には絶対に書けない種類のそれ」と申しましたが、実際問題として今のアイドルブーム以降、20世紀のアイドルソングに多用されていた「男性作詞家による『男にとって都合のいい女の子』の気持ちを歌う歌」が滅法少なくなっていることは間違いなく。

その典型が秋元康によるうしろゆびさされ組「うしろゆびさされ組」であり、前にも言いましたが、決してイケメンとは言えない秋元康がこの歌を将来嫁になる女に歌わせていたことに過度の趣深さを感じてしまうわけですが。

で、これも以前、キング移籍以降のAKB48のシングル楽曲の歌詞が概ね男目線になっていることを指摘しましたが、これは何らかの戦略であると共に、その非常に20世紀的な『男にとって都合のいい女の子』を描かない方向へのシフトでもあると捉えていいような気がしてまいりました。
こっちの方向は、乃木坂46も概ね恋愛ソングは男目線で、それ以外は「女同士の友情」がテーマになっていたりするのも同じですし、秋元関連でなくても、ももクロがシングル表題曲では恋愛沙汰以上に何かと戦いがちだったりするのにもシンクロします。
君の名は希望」は最後まで悩んだくらい2013年アイドルソングの傑作ではあるのですが。

また、これはつんく♂が一般化したものと認識しているのですが、「恋したい!」としか言ってなかったり、単なる恋愛観の提示だったりする、特定の対象が存在しない恋愛ソングもございまして、そこらはハロプロ以外ではSUPER☆GIRLSあたりが色濃く受け継いでいます。

そういう感じで、メジャーどころが捨ててしまった「女の子目線の特定の対象に向けた恋愛ソング」は、その他のアイドルが拾っているわけですが、そこをうまく「男にとって都合のいい女」感を最小限に留めつつ、往年のアイドルソング感を最大限にその魅力として発揮しているのが、T-Pallete以降のNegiccoじゃないかと思ったり。

それでもAKBが島崎遥香センターという段になった際『男にとって都合のいい女の子』観全開の「永遠プレッシャー」を持ってくる秋元氏は変態。気持ちはすごくよくわかる。

つうかまあ、『男にとって都合のいい女の子』的な歌を今聴きたかったら演歌聴けってことです。水森かおり「伊勢めぐり」とかすげえぞ。「尽くしたりない 後悔ばかり」ですよ。すげえ。