先日のTSUTAYAの話、個人サイトを開いてから今までの20年で、断トツで最大のPVを記録して正味ビビっているのですが、いただいたコメント等の中にアメリカのDVDレンタルと紐付けて語られているものが多くあり、かつそのご意見の中でのアメリカのDVDレンタル事情の認識の具合がかそれぞれで結構異なっていらっしゃいまして。
じゃあそれ実際のところはどうやねんと思ったので、調べてみました。
結論としては、アメリカのDVDレンタル、全盛期と比較すれば見る影もないことは間違いないにしろ、意外としぶとく生き残っていました。
店舗型のレンタルについては、最盛期には世界に9,000店舗を展開していたBlockbusterが2013年11月に直営店舗の全店閉鎖を発表した件が当時大きく報道されましたが、2014年1月に実際に閉店になってそれで全米からレンタル店舗が一掃された、というわけではありませんでした。
見つけた中で一番大きい店舗型のチェーンがFamily Video。
アメリカの中部から東部にかけてとカナダの一部地域で現時点で666店舗を展開しています。もちろん、BlockbusterもMovie GalleryもHollywood Videoも張り切っていた頃に比べれば屁みたいな数ですし、現在の日本でもTSUTAYAとGEOだけで2,000店舗を越えるわけですから、それっぽっちかよと言われればそうなんですけど。でもそれだけまだ残っている。が、数年前の数字を見たら700店舗以上って書いてあったので、やっぱりヤバいっちゃヤバい。
次にRedbox。サイトは米国以外アクセスできんようなのでリンクなし。
商業施設や空港に設置された自動販売機型のDVD・ゲームのレンタルです。自販機なので1台最大200タイトルくらいまでしか入りませんが、価格を下げ、地域特性等を相当練って格納タイトルを選ぶことでそれなりに効率的に収益を上げられるようになっているとのこと。言うても人件費もテナント料も最低限で済むというのは大きい。
今いくつほど「KIOSK」と呼ばれる自動販売機が設置されているのかロケーターでは実数とてもカウントできなかったのですが、2018年6月時点で41,500か所以上というのは見つけました。調べて出てきた過去最大の数字が43,500で、そこから減少はしていますので、全体としての状況はこちらもあんまりよろしくないのかもしれませんが、それでもこの数です。
もうひとつ、DVD Netflix。こちらもサイトはアクセスできず。
Netflixが日本に上陸したのは配信になってからですが、元々は1997年にアメリカでサービスを開始した宅配型DVDレンタル業。日本でも当たり前になった「定額借り放題制」を編み出して、宅配型DVDレンタル業の全米トップにのし上がりました。
2007年からは今のスタイルのストリーミングサービスを開始して現在はそちらの方が圧倒的に主流になっていますが、宅配型DVDレンタルもまだサービスを継続しています。
決算資料(P.11が概要として具合がいいです)見る限り、DVDの売上はストリーミングの1/20を切り、売上的にはそろそろ撤退も考えていい規模かなあとは思いますが、まだ生きています。
という感じで、日本以上に斜陽であることは間違いないにしても、それなりに生き残っている、というのが実際。でもやっぱり日本に入ってくるのは「アメリカではレンタル壊滅」という話が非常に多く。
これ何でだろうと考えたのですが、Family Videoのストア・ロケーターやRedboxの外部ロケーターサービスを見たら何となく理解できました。
アレです。アメリカの大統領選で多くの有識者やマスコミが全く想定していなかったトランプ氏が結果として勝利した、というのとだいたい同じ構図だろうと。
西海岸、東海岸の都市部にはFamily Videoの店舗は全くありませんし、都市でも街中ではなく郊外がほとんどです。人口比で考えるとRedboxのKioskの都市部での密度も低い感じです。
都市部は回線の環境もよく、所得も高いので高速回線での視聴に何の問題ありませんから、ディスクが必要になる状況は多くは生じません。日本人もおよそ西海岸東海岸等の都市部にほとんどの人が住まわれていて、そういう都市環境で暮らし、そういう現地の人たちと交流している結果としての体感が、発信として日本に届いているということでしょう。
でも郊外や地方になるといろいろと事情は違ってきます。
アメリカのインターネット回線は、日本以上にケーブルTV網が発達したが故にそれらの企業がプロバイダーサービスを兼ねるパターンが多く、それが圧倒的に強いためにあまり競争原理が働かず、日本と比べて遅い割に高いという話を聞きます。日本以上に所得によって高速回線の恩恵を受けられないこともありそうですが、さらにこういう各地域の回線状況の地図を見てみるとそれ以上に都市部とそれ以外の地域格差が大きいことがわかります。
DVD Netflixなんかは、単体で生きられるレベルでお金が回っている限りは生活インフラ的に残しておく、みたいな選択をしているのかもしれません。田舎のローカル線的に。DVDレンタル全体にしても、今以上に細くはなるでしょうが、サービスは今後も結構長期にわたって継続されそうな気がしてきました。
一方日本は、高速回線の家庭への普及率は世界有数ではあるのですが、今のCDの売り上げが示すようにパッケージに対する信頼も世界有数です。
今後レンタル店舗ががっつり減ることは間違いないというか、前回の話の通り、TSUTAYAは恐らく計画的な縮小に向かっているのであろうと想定されることからも、レンタルという業態は「終わりの始まり」の地点は既に通り過ぎているとは思うのですが、「全滅」はもう少し先の話になるのかな、と今回調べながら思いました。
とりあえずTSUTAYAとGEO以外のレンタルチェーン、ビデオ1やアリオンやUSVやビデオインアメリカが生きている間はまだ大丈夫だ。今の時点でだいぶしんどいかも知らんけど。
ただ、5Gが世間に普及した頃にはアメリカも日本も一部を除いて全部死ぬ。たぶん。