代代代「むだい」のこと

代代代 / むだい (Album)

前の初流通盤から半年ちょい、相当に変えてきました。というか「定めてきた」と言った方が正解か。
それなりの選曲意図はあったにしても制作した曲を「並べた」感がまだあった前作から、完全にアルバムとしてのパッケージを意識した曲順、全体の空気感。それも非常に特異な。

1曲目、これまでの彼女たちにはなかった浮遊感すらあるソフトな雰囲気の曲から始まり、おやどうなるかと思ってから一転の地獄のような2曲目。過去の音楽の一番何に似ているかと考えたらThrobbing Gristle。何も盛ってない。本当にそう。

インダストリアルとかデジタルハードコアって、ガチにやればやるほど「おもしろ」要素が滲むことも多いじゃないですか。Atari Teenage Riotとかみたいに。代代代も前作はそんな「おもしろ」的な部分が間違いなくあったのですが、今作は持ち曲の中からも収録曲を選び、アレンジを変え、丹念にそんな要素を切り離していった結果、2曲目以降もポップなメロディーや激しいリズムはあるにしても単純に盛り上がれない、何か禍々しさまで発するような楽曲が並ぶのです。
音楽聴いてこんな不穏な気持ちになったことってめったにないです。そしてそんな空気を乗り越えて最終曲M-8の明るくポップなイントロのシンセ音が鳴ったとき、本当に安堵したのです。

アイドル楽曲ということで言えば、ここはまだ同業の誰も踏み込んだことのない、いわばブルーオーシャンであることは間違いないのですが、もう少し広く言えば、このへんって物理的に血まみれの人が突っ立っていがちな領域の音楽じゃないですか。
何でそんなところにアイドルがのこのこ入ってくるのかと考えると、もう最高に面白い。ここまで強烈な作家性の匂いを放つアイドルの盤って他に知らないし、前作からのこの変化を考えると、今後もまたどんどん変わっていくしかないわけで。

昨今のアイドルグループはある程度カラーや設定を定めて、そこにマッチした楽曲を乗せるパターンが多いと思うのですが、彼女たちの場合、プロデューサーの小倉氏の「根」の部分がグループとしての「根」にもなっているような感じがするので、どれだけ変えていこうがブレる気がしません。がんがん無茶すればいいと思います。もっと滅茶苦茶で不穏で禍々しい曲を聴きたいです。

他のアイドルグループも、差別化のためにはやむを得ないという意見はあると思いますが、安易なカラーやテーマ設定やめた方がいいと思います。つりビットなんて今となっては初期設定すげえ邪魔そうだし。