アイドル音源4種のこと

アイドル音源4選。

AH(嗚呼)/DOPPEL(Album)
滋賀ベースの2人組。旅館の若女将と介護施設職員という兼業アイドル。
一般社会と接点を持っているため真っ当な交遊もあり、いい大人なので別に男友達がたくさんいても問題なく、結果として地下としては珍しく完全に生バンド仕様のトラックの制作が可能。
結果として猛烈に正しいバンドサウンド。音源だけならアイドルというよりは女子ツインヴォーカルのバンドの音に聞こえる。
歌詞からは大人女子のなかなかに辛辣な視点等もあったりして、本当に普通にポップスとして聴くが吉。
ただ、うっかり限定盤を購入すると、パッケージが果てしなく頭おかしい。


Perfume / Future Pop(Album)
彼女たち自身はまるで変わらなくても、音は時代に沿って変わっていく。
「If You Wanna」のようなAメロの一部と同じメロディがアレンジによって後にサビとして機能する曲や、「無限未来」やアルバム表題曲のように音そのものはそうでなくても構造は完全にEDM的にサビ部分が完全なインストの曲が目立ち、もはやアルバムに「A→B→サビ→A→B→サビ」のような典型的な構造の曲はほとんどなく、単純に音楽として音源を聴いても面白い彼女たちはずっと不変。素晴らしい。


イッツ・マイ・ターン/ライブ・ライフ / フィロソフィーのダンス (Single)
相変わらずレベル高くていい曲なのだけど、この質の高さがむしろ彼女たちの今後を縛ってしまっているような気もしてきた。
きちんと元ネタがあるブラック寄りの音、ということはその箱の形は元々あるものですので、「かなりいい曲」は作れても世間を撃ち抜くような「ものごっつい曲」は生まれにくいかもしれないのかも、と。
それでも、少しずつ動員を増やしているし、このまま少しずつ雪だるまを大きくしていけばいいのかな、とも思う。

tipToe. / thirdShoes.(EP)
@JAM EXPOの初見組で一番面白かったのが彼女たち。
「一緒に青春しませんか」というキャッチフレーズで活動しているのですが、彼女たちが提示する青春は男女でウェイウェイするようなものではなく、観ていて思ったのは、これは「放課後に教室で静かに本を読んでいる女の子」のアイドル化ではないか、ということ。確かにそれも青春だ。
こういう方向性は他になく、ものすごく興味を持ちました。
ただ現状課題だと感じたのは、どうしても新しいアイドルグループのファンは他のアイドルグループから移ってきたか兼業かであり、したがってどうしてもジャージャー言うオタクが中心になります。
彼らは間違いなく今彼女たちを支えているのですが、その女の子たちの佇まいとオタクのノリは明らかにアンマッチであり、今後このコンセプトでファンを増やしていこうとするとそのアンマッチは致命的な課題になりかねない。

と思っていたらこの新しい音源のM-1は「オタ芸を打てない曲調」という非常にシンプルな回答を示してきて笑った。M-4とかはむしろこれまでの彼女たちの中で一番アッパーな曲だし、ただ切り捨てようとしているわけではないんだけど、何とかしてコンセプトとファンのノリとの間に落としどころを見出そうとしているような気は、する。