2018年VIVA LA ROCKのこと

ゴールデンウイーク後半4日間、さいたまスーパーアリーナに籠城してきました。VIVA LA ROCK3日とビバラポップ1日。
Twitterでは【備忘】という形でできるだけ観た直後に短文で印象を放り込んでいたのですが、これまた1組ずつ改めて書き出すと大変にエゲツないことになりそうなので、一旦これはこれで。

各1日1件ずつ特筆したい出来事がありましたので、本日はそれを。

1日目はスピッツ。
ことあるたびに、私は2ndアルバム「名前をつけてやる」原理主義者であると申しております。
1992年の初頭、レンタルCD屋に行っていつも通り4枚1000円の4枚をセレクトしてカウンターに向かったところ、「今セールで5枚で1000円」と言われ、近場見渡して1stアルバムのヒトデのジャケットが目に入ったため「名前は知ってるけど聴いたことないな」と思ってそれを選び、家に帰って聴いて卒倒し、翌日大学の生協のCD売り場に赴くものの在庫なく、その足で授業ぶっちぎって三宮センター街のダイエー地階のCD売り場まで行ってその1stとすでにその時出ていた2ndも一気買い、帰宅して2nd聴いてさらに卒倒し、どうすればこのアルバムを一番気持ちよく聴けるかと考えた結果、CDウォークマンに突っ込んでアルバム通して聴き切るまで冬の夜中の国道2号線あたりを徘徊していた、そんな思い出。
中でも1曲目の「ウサギのバイク」は、その楽曲構造の特異さもあって特に印象に残り、今となってもスピッツのベスト曲はどれかと問われれば即答しそうなくらい好きな曲だったのです。

それでもこの曲は発表当時からツアーの楽曲に組み込まれることもなく、彼らの30年に渡る活動の中で生で披露されたのは恐らく片手で足りるレベルのはずで。

それが今年の4月、東京FM主催の企画ライブで「ウサギのバイク」をやったという情報が入ってきて、少しドキドキしたのですが、このビバラ当日は蓋を開けてみればヒット曲のオンパレード状態で、とても地味曲が入る隙などないと思っていました。
が、「チェリー」「スターゲイザー」と来て唐突に「ウサギのバイク」。何でこの流れでその曲なのかいまだに意味わかんないんだけど、でも俺は生で聴いて観たんです。間違いないんです。多分ちょっと泣いてた。


2日目はyuiちゃん。
彼女は今はFLOWER FLOWER名義で活動をしていて、その登場は1日目。ちょっと観ておこうかと思って赴いた途端、本編の前のサウンドチェックの演奏で耳に飛び込んできたのは「CHE.R.R.Y.」。それであれっと思って。
かつて彼女はYUIとしてのソロ名義で活動していましたが、その活動に関していろいろレーベルや事務所とぶつかって半ばドロップアウト気味にソロ名義の活動を停止したわけで。
FLOWER FLOWERという名義は、言ってみれば過去そういういろんなことがあって自ら否定した「YUI」という名義から、彼女を守る「繭」のような存在なのだろうと思っていたのですが。

で、生で聴いて、今年の3月のライブで「CHE.R.R.Y.」をやっていたことを知り。もう何かぐっと来るわけですよ。ようやく今年になって過去と自然に対峙できるようになったんだと。

そしてVIVA LA ROCK2日目の「J-ROCK ANTHEMS」。亀田誠治氏をバンマスに、赤い公園の津野さん、スカパラの加藤さん、凛として時雨のピエール中野氏のバンドがいて、そこに曲毎にボーカルを呼んでは過去の名曲をカバーするという企画ステージなのですが、そこにyuiちゃんが単身で登場するのです。
歌い出したのはスピッツの「チェリー」。なるほどね気が利いてるね、と思ったのもつかの間、途中で「CHE.R.R.Y.」のサビをぶち込んできまして。それを笑顔で楽しそうに歌うyuiちゃん。昨日は自分のバンドとしてだったけど、今日は単身そういう場に来てそれを歌う。
そこで思ったんです。これは、今までは必要だったFLOWER FLOWERという「繭」からも外に出ることができたということではないかと。

ひとりの女性が大人になり、過去には拒んでいたいろんなことを、笑って受け入れられるようになっていくプロセスを見たような気がして。以前はあんなか弱く華奢に見えた女の子がとても強く見えました。すごいかっこいいよ、今の彼女。


3日目はエレカシ。
VIVA LA ROCKの3日目というのは概ねラウドでヘビーなバンドが連なる日なのですが、そこに何故か入り込んだエレカシ。スケの都合なのか何なのかわかりませんがそうなって。
でも宮本、そのラウドでヘビーな流れに本気で乗ってきた。

1. RAINBOW
2. 奴隷天国
3. 星の砂
4. 悲しみの果て
5. Easy Go
6. 桜の花、舞い上がる道を
7. ガストロンジャー
8. 今宵の月のように
9. ファイティングマン

もちろんこのために1から準備したわけではなく、先日まで開催されていた30周年ツアーからの抜粋ではあるのですが、なぜ敢えてフェスの場に、しかも若年層の多いVIVA LA ROCKで初期ソニー時代の「奴隷天国」と「星の砂」を並べてきたのか考えると、1980年代のデビュー当時は少なくともメジャーでは屈指のラウド&ヘビーなバンドだった彼らが、この3日目の並びの中でその時の本気出してきたとしか思えなくて。
今の、もっと機能的に盛り上げることができるバンドと対峙したかつてのラウド系バンドの、今求められている音と、己の矜持・意地との狭間のセットリスト。
そして新曲「Easy Go」の過去のそういう楽曲に肩を並べるレベルの強さに痺れる。ここに来てまたピークかよ。何度目だよピーク。もう最高じゃないですか。


4日目というかビバラポップでは欅坂46。
センター様はもう現場には出てこなくなり、いろいろあって今回他の主要メンバー2名も欠席。どうなることかと思いながら観て、「これ別に主要だろうがメンバー数人抜けたところでビクともしねえわ」という結論。
普段我々がよく観る「ライブ」というものとは概念からして別物です。
無理くり例えれば、テーマはあるがストーリーはないミュージカルと、マスゲームと、別のよくわからない何かを、足して混ぜてそのまんまぶちまけた感じ。「推しメンが可愛い」とかいう気持ちで観ていられるレベルじゃない。ステージ全体からものすごい「圧」が伝わってくる。「欅坂46」という塊が押し寄せてくる。ただただ「何かすごいもの観た」という感想。
「だから一度欅界隈に入ったものの、推しを普通にアイドルとして見たいと思ったオタはどんどんひらがなけやきに流れる」と識者の弁。納得。よくできている。


そんな感じの、泣きそうになったり納得したり続きの4日間。座って観ていてもさすがに4日間はしんどいのですが、その分得られるものもあるので、やめるわけにいかないのですよ。