できるだけ何でも先入観なく聴こうと思ってはいるけれど、やっぱりどこかに偏見はあって、特にニコ動・YouTube系出身の人たちについては、噂を聞いても腰を上げるまでに他より時間がかかったりしています。

米津玄師も、ハチ名義の頃の音はクオリティ高くてもどうしてもあのチャカチャカしたピッチのボカロ王道のノリに乗っていけず、メジャーデビューから3作目、ようやく先日のアルバム「BREMEN」が完全にそのノリを脱して(自分の思う)王道の音を出すようになるに至ってようやく腑に落ちた次第です。
ただ、そういう音になってみて、明らかに他出身のミュージシャンと並べて突出したプレゼンスを発揮していることもわかり、ハチ名義時代から熱狂的に推していた方々の目利きに感服するとともにとてつもなく反省したのですが、それでもまだやっぱり別件で漏れていたことが本日わかりました。

ぼくのりりっくのぼうよみ

名前と「閃光ライオット」出場という話だけは以前聞いたことがあったものの結局聴くことなく放置、12月にメジャーデビューという話を聞いてようやく本日YouTubeで聴いてみてただちに腰を抜かす。
本人は「ラップっぽいこと」という表現をしていますが、その音のどこにも典型的なヒップホップのマナーはなく、そもそも歌なのかラップなのか、ポスト的サウンドなのか王道なのかもわからない、少なくとも今の日本ではどこにも属しようのない音楽。

CDで過去盤の再発が活発になって以降「今の若者にとっては全てが『新譜』なのだよなあ」という気持ちはあり、実際様々な新旧の音楽を自在にクロスオーバーする自由な音を出す若いミュージシャンも出てきてはいたものの、ここまでジャンルを気にしていないのは他にちょっといないんじゃないか。つうかどうやったら10代のうちにこんな音世界にたどり着けるのか。

それでも何に似ているのかと考えたところ、3rdアルバムあたりで基本的に好き勝手やれるモードに突入した結果面白いくらい売上が落ちた頃の宇多田ヒカルに近いのではないかという結論。彼女はそれでもメジャーであることだとか、それまでに出した音であるとか、締め切りだとかタイアップだとか、いろんなしがらみの中での「好き勝手」であり、たとえば「PASSION」はこれ多分Bjorkの方に近い音やりたかったのが結局こんなんなっちゃった的な感じだと予想しているのですが、もし彼女がそういうしがらみ全無視して完全フルスロットルで好き勝手やったら、もしかしたらこれに近い音が出てきたのかもしれないのでは、と。

何にせよ、もうおっさんは畏怖しながらそっと眺めることしかできない。若者怖い。