Tears For Fears「The Tipping Point」のこと

Tears For Fears、17年ぶりのアルバム。1989年に3rd「The Seeds Of Love」をリリースした後の1990年にCurt Smithが脱退して、それ以降2作はRoland Orzabalのソロユニットとしての作品だったわけですが、2004年に再び2人合流してのアルバム「Everybody Loves A Happy Ending」をリリースし、今作はそこから17年ぶりのアルバムということになります。

「Everybody Loves A Happy Ending」リリース時、非常に期待して聴いたものの正直イマイチだなあと思いまして、17年後の今作は正直恐る恐る聴き始めたのですが、今回はよい。
どう違うのかと改めて聴き比べてみたのですが、「Everybody Loves A Happy Ending」は「The Seeds Of Love」の次を作ろうとアイデアを様々ぶち込んだでみたものの、どれも練り切れていない印象で。

一方今回は、そこここに新たなクリエイティブは垣間見えるものの、全体的には1st、2nd、3rdという過去の資産を持ってきてそれらの音を組み合わせたような、既聴感ありつつ何となく気持ちいいところに落とし込んだ音になっているので、非常に安心してゆったり聴けます。

もちろん1stのような若さゆえの焦燥感とか、2ndのような堂々とした空気感とか、3rdのような時間とお金を潤沢に使ったプロダクションはもうここにはありませんが、アルバムタイトル曲のように1stのようなイントロからドラムが入ると2ndっぽくなり、サビ後半は3rd感あるみたいな感じとか、M-5の「Shout」のような「ポップではないけどやたらキャッチ―」なメロ+「Sowing The Seeds Of Love」ばりにローランドの低音Aメロからカートのハイトーンのサビに入る時の気持ちよさとか、とてもTears For Fears。
無理はしてないのですがとても丁寧に作られた楽曲の数々。よいです。