ディスクユニオンのベストアルバムストアのこと

「ベストアルバム」というのはここまでミュージシャン諸氏にとっては「おいしい」ビジネスでした。入門としてほどよく売れるという点は当然、新曲1-2曲制作したら後は既存曲で済んでしまうという点での費用対効果も抜群です。
まあ、ベスト盤出せるようになるまで頑張れたことがまずすごいわけで、そういう意味では「ご褒美」的な側面もあったり。レーベルとの契約終了の引導だったりもするものの。

そういう「いい感じ」の存在であったはずのベスト盤ですが、サブスク・ストリーミング上等の世の中になった結果、既存曲を編集するというのは「プレイリスト」の役割になりました。
実際Apple Musicなんかだとちょっとしたミュージシャンには「はじめての〇〇」というベスト盤的プレイリストが割と目立つ位置にぶら下がっていたり、何となれば自分で勝手に好きな曲並べて「俺ベスト」を作成するのも一瞬。
正味、徐々にパッケージとしての「ベストアルバム」というものの存在意義が薄れつつある、そんなタイミングでディスクユニオンが新宿に7月9日「ベストアルバム専門ストア」を開店するというので、見てきました。

元々ディスクユニオンの中古ストアは紀伊国屋ビルの上の方にあったのですが、その隣に新しくビルができまして、そのビルの3階を1フロア借り切って「中古センター」「クラシック館」「収納ストア」とともに「ベストアルバム」専門のフロアがあるという形。

f:id:wasteofpops:20210712000542j:plain

「セカンドハンズ店」が紀伊国屋ビルの上の方に入る前は、その新しくできたビルの前にそこに建っていたビルの中にあったりといろいろ面倒なのですが。

f:id:wasteofpops:20210712000834j:plain

エレベーターで3階に上がると、フロアのメインはあくまでもクラシックと中古で、ベストアルバムストアはさほど大きい面積を割いたものではありませんでした。
CDメインで割とジャンル分けは大きめ、日本についてはほぼ完全に「日本」という括りであとは五十音順なので、J-POPも演歌もフォークも歌謡曲も一緒くた。水前寺清子とSUPERCARがほぼ隣り合うように並んでいるのはある意味新鮮です。
サザンの「バラッド」シリーズとか、アナログの方には日本で勝手に編集したビーチボーイズのヒット曲4曲収録のEP盤とかもあり、厳密な「ベスト盤」だけでなく、そういう「単独ミュージシャンの自曲による編集盤」であればOKくらいの括りになっています。

The ピーズの、敢えてそういうタイトルを付けたオリジナルアルバム「グレイテスト・ヒッツVol.1」「グレイテスト・ヒッツVol.2」も本当のベスト盤「ブッチーメリー」の横に並んでいたのはこれは止むを得ないというか、そういうタイトルを付けたThe ピーズが悪い。

この前代未聞の専門店の意図は何か考えてみたのですが、よく考えれば、音楽パッケージを初めて手にする際の入口のハードルを下げる、そんな役割を担えるのではないかと思います。
悪く考えれば、CDの社会的寿命がそろそろしんどくなってきて、急激に需要がシュリンクしそうな現在、割と潤沢に中古在庫があるベスト盤をうまいこと捌くための手段という側面はないのか、とかも思ったりします。
何にせよ、この「ベストアルバムストア」は、クラシック館や中古センターほどに長く続けていく業態ではないのだろうなあ、という気はしています。

ただ、ディスクユニオン。3月に渋谷のdiskunion ROCK in TOKYOをオープンした時もそうだったんですけど、新築のビルの、他の階はまだ工事中の中、無理やり自分とこのフロアだけつんのめり気味にオープンさせているのが、だからそれも「今」を逃すとビジネス的にヤバいってことなのではないかと。