昨日の「マツコの知らない世界」で、SHOW-YAの寺田恵子さんと、Mary's Blood/NEMOPHILAのSAKIさんを迎えて「ガールズバンド」を特集していたのでぼんやりと眺めていたところ、いろいろ思いついたのでちょいちょいTwitterに流していたのですが、いったんまとめてみようと思いまして、書きます。
まず冒頭ですごく違和感を感じたのが、2人が口をそろえて「今のガールズバンドは売れない、不遇である」と言っていたこと。自分の感覚では、確かにプリプリやSHOW-YAレベルのビッグネームこそいないものの、日本のバンドシーン史上で今が最も数多く様々なガールズバンドが存在して活躍していると思っていたので。
ただ、番組を観ていくうちに何となくその違和感の理由が何となく理解できまして。
番組でもざっくり日本のガールズバンドの歴史を流していましたが、少なくともメジャーデビューした「全員が女性」のバンドでは最古のガールズは当然紹介されたのですが、そこからおよそプリプリ・SHOW-YAの時代まですっ飛んでしまいました。
その間にメジャーデビューしたバンドでざっと思いつくだけでもガールズバンドの実質的パイオニア的存在であるZELDAやタンゴ・ヨーロッパがいて、プリプリ・SHOW-YAと同時期のバンドでもGO-BANG'SやNav Katzeがいたはずなのですが、そこはスルー。
当然80年代インディーズの赤痢とかキャ→とかパパイヤパラノイアなど出てくるはずもなく。
ただ、その後今に至るガールズバンドの歴史で、ZELDAとプリプリ/SHOW-YAに匹敵するレベルの一大転換点だったと思っているチャットモンチーが「技巧派」としてさらっと流され、更に新時代のバンドの紹介フリップでは、寺田さんがよくご存じのHR/HM系のバンドとそれ以外でぱっつり分けられていたのを見て、そこでようやく何となく理解。
チャットモンチーはガールズバンド全体で捉えれば「転換点」ではなく「新しい起点」だったのだなあと。
SHOW-YAは元々寺田さんのソロだったはずのものをバンドとしてのデビューを勝ち取ったものの更にデビューしてもポップス路線を強要されるなど、ブレイクするまで辛酸を舐め続けてきた存在。
同僚プリプリも元々はアイドルバンドとしてデビューさせられ、もがきつつ自分のスタイルでのヒットを勝ち取ったわけで、そういう初期方針に持っていこうとする制作陣の男性との対立や元々男性中心のコミュニティであったバンド界隈での軋轢を乗り越えてここまできた、そういう人たち。
時には寺田さん曰く「あざとさ」と称した「敢えて女性性を押し出す」ことも躊躇せず、がむしゃらにポジションを勝ち取ったことには彼女たち自身相当な自負もあるでしょう。そりゃ「戦いの歴史」とか「男に負けないギター早弾き」とかテロップで出したくもなります。
一方チャットモンチーが特別だったのは、その「普通」さ。「女だてら」感もなければ「あざとさ」も皆無、見たくれでは上昇志向さえもうかがえないレベル、少なくとも「対立」「VS 男」的な匂いを一切させない異常なほどのフラットさでした。
それは今考えれば、彼女たちが徳島の出身で、東京や大阪のアマチュアシーンで揉まれ、その結果ギラついたりすることもあまりないままメジャーデビューまで行ってしまったことも大きいと思いますが、結果としてそういうスタイル・佇まいが時代の女の子に刺さり、それ以降のガールズバンドの定型のひとつになっていくわけです。
だからそれは「揉まれてなんぼ」で「対立」上等のそれ以前のガールズバンドとは全く別の形であって、でも昔からのスタイルのガールズバンドもそれ以前から今に至るまで存在し続けていて、その2つの線はあまり馴染むことも重なることもなく併存する形になったということで、だからチャットモンチーは「転換点」ではなくあくまでも「新しい起点」であったと、そう思ったのです。
今やシーンのメインはチャットモンチー以降になってはいるけれど、今回の番組はその、昔から存在している方のガールズバンド界隈の方々が出演し、その目線から過去から現在のガールズバンドを俯瞰した結果、ああいう構成の番組になったと考えると非常に合点がいったのです。納得した。
番組で紹介されなかった過去のバンドにしても、寺田さんがZELDAやGO-BANG'Sと仲いいということはあんまり想像できないし(実際NAONのYAONにもメンバーソロ含めて出演歴なし)、妥当ではないかと。いわんやSuper Junky Monkey。
もう一つ思ったのは、CHAIの「NEOかわいい」という宣言は、それ要するに寺田さん言うところの「あざとさ」からの決別というか、男目線の価値観からの脱却という側面もありますので、そしてそういう意識のありようはチャットモンチー以降とも異なっているので、これもしかしたら「3つめの起点」が今作られようとしているのではないか、ということ。
「マツコの知らない世界」は、自分では珍しく録画している番組で、いろいろ突っ込み入れながら観ているのですが、今回もそうしつつ、でもいろいろ自分の中の理解が整理されて非常にためになりました。ありがとうございます。
ただ、このままもう少し時間がたつと寺田さんが「ガールズバンド界の内田裕也さん」みたいになりそうな気がして、それはいいのか悪いのか本当に判断できない。