第71回紅白歌合戦の歌唱曲のこと

紅白歌合戦、歌唱曲が出ましたので「歌唱曲がいつリリースされたのか、売れた曲なのか、過去紅白で何回歌ったのか」の一覧を今年もやります。
曲名の後のカッコ内の数値が過去に歌った回数。数字無しは初披露。年はリリース年でカッコ内はシングルの売上数。最近の曲で合算の値が拾うことができたものには「合算」と付けてそっちの値を載せました。

歌手名 曲名 発表年(売上)
あいみょん 裸の心 2020(561,514・合算)
石川さゆり 天城越え(12) 1986(48,500)
坂本冬美 ブッダのように私は死んだ 2020(9,400)
櫻坂46 Nobody's fault 2020(425,800・合算)
JUJU やさしさで溢れるように 2009(18,400)
Superfly 愛をこめて花束を(2) 2008(46,700)
天童よしみ あんたの花道(3) 2002(114,000)
東京事変 うるうるうるう 2020(アルバム)
NiziU Make you happy 2020(配信)
乃木坂46 Route 246 2020(配信)
Perfume (メドレー)  
日向坂46 アザトカワイイ 2020(アルバム)
Foorin パプリカ(2) 2018(176,900)
BABYMETAL イジメ、ダメ、ゼッタイ 2013(24,100)
松田聖子 瑠璃色の地球(3) 1986(アルバム)
MISIA アイノカタチ 2018(46,700)
水森かおり 瀬戸内 小豆島 2020(29,200)
milet inside you 2019(15,000)
LiSA (メドレー)  
Little Glee Monster 足跡 2020(19,200)
     
(メドレー)  
五木ひろし 山河(2) 2000(61,300)
瑛人 香水 2019(660,466・合算)
Official髭男dism I LOVE... 2020(878,500・合算)
関ジャニ∞ 前向きスクリーム! 2015(318,100)
Kis-My-Ft2 We never give up! 2011(329,000)
King & Prince I promise 2020(未集計)
郷ひろみ (メドレー)  
GENERATIONS YOU & I 2020(配信)
純烈 愛をください 2020(50,000)
鈴木雅之 夢で逢えたら 1996(439,600)
SixTones Imitation Rain 2020(1,760,900)
Snow Man D.D. 2020(1,760,900)
氷川きよし 限界突破×サバイバー(2) 2017(21,900)
福山雅治 家族になろうよ 2011(321,900)
Hey! Say! JUMP (メドレー)  
星野源 うちで踊ろう 2020(配信)
Mr. Children Documentary film 2020(アルバム)
三山ひろし 北のおんな町 2020(24,200)
山内惠介 恋する街角 2008(9,000)
ゆず 雨のち晴レルヤ(2) 2013(73,500)

今回、瑛人が披露するのがCD化されていない楽曲だったり、NiziUの楽曲は先日CD化はされたもののカップリングとしてのリリースだったというのは、およそ想定できていたことですが、今回蓋を開けてみると、乃木坂やGENERATIONSも配信のみの楽曲ということになりましたし、キンプリは先週CDリリースのド新曲。
星野源の「うちで踊ろう」は非常に今年を象徴する曲で、選曲されること自体は順当なのですが、実際CDとして世に出ているのは10月リリースのシングルBOXセットの特典CDのみだったりとか、もうこういう状況は実に普通になってまいりました。

他に今年で特筆すべきところは、出場はしたものの他人の有名曲をカバーするだけ、というパターンがなくなったこと。
鈴木雅之の「夢で逢えたら」はそれと言えばそれですが、ラッツ&スターの楽曲としてもヒットしていることもあり、「あてがわれた」感じでもありません。
もちろん、既に特別枠でアナウンスされているさだまさしのようなパターンが今後も出てくるとか、企画枠で出場歌手が別の曲も歌うとかでどこかでフォローすることはあるのかもしれませんが。

一方、ベテラン勢で目立つのは、「今こそ歌おう みんなでエール」という今年の紅白のキャッチフレーズに寄せた感のある楽曲が多いというところ。
Superfly、福山雅治、松田聖子、ゆずあたりの選曲はまさにそういう意図でしょう。
12年ぶり2回目のミスチルは、ここ最近びっくりするくらい歌番組に出てはニューアルバムの楽曲を披露しまくっていて、紅白もその一環に過ぎないというブレない態度ではありますが、それでも「Documentary film」は、新作の楽曲の中でも一番紅白のテーマに近いものを選んだのではないかと思います。

個人的にはずっとその出場状況を追っている演歌勢が気になります。
石川さゆりが2007年以来の「津軽海峡・冬景色」と「天城越え」のルーティーンを維持したとか、坂本冬美が桑田佳祐作詞作曲の奇曲「ブッダのように私は死んだ」を期待通りやってくれるとかもあるのですが、今年一番特筆すべきと思っているのが、五木ひろしの「山河」。

前から申し上げている通り、五木ひろしは「流行歌手としての矜持」を非常に強く持っている方で、その年亡くなられた作家さんに提供された楽曲を追悼で歌うとか、長野オリンピックの前年に「千曲川」を歌うとか、特殊な事態にならない限りその年リリースの楽曲を歌ってきた人なのですが、昨年は2018年リリースの「VIVA・LA・VIDA!」を2年連続歌唱して少しビビって。
それについてはこの曲を2年越しでプロモーションしていたという状況を把握して納得したのですが、今年2020年は「五木ひろし」名義でデビューした1971年以来、初めてシングルのリリースが一切ない年になりました。そのこと自体はまあ状況踏まえたら止むを得ないのかもしれませんが、ではそういう態度でここまで来た五木ひろしが何を歌うのか、ということを気にしていました。

それでセレクトされたのが、1970-80年代の超有名曲ではなく、2000年リリースの当時6万枚程度の売上の楽曲。それでも、他の演歌歌手にもカバーされているスケールの大きな名曲なのですが、それをここで引っ張り出してくることにワクワクしています。

正味今年は世の中が世の中だけに例年のようなノリにはなりにくいかもしれません。
ただ、無観客ということで今年しか見られないかもしれない演出もふんだんにブチ込んでくるでしょうし(BABYMETALはそういう特殊な演出ができるからこその初出場だと思っています)、それなりに見どころは多い紅白になるのではないかと思います。

もう「みんなが知っている流行歌」などほとんどこの世から消失している今、紅白が昭和の頃のようなことになることはありません。正直ここ何年か「このフォーマットでいつまでできるのだろう」と思うこともありましたが、去年の氷川きよしを観て、紅白が紅白でなくなるとすればその理由は「国民的ヒットの不在」より先にジェンダー関連が理由になるのではないかとうっすら思ったりもして。

でも、「男女混成グループ」が紅白に初登場したのが1968年・第19回のピンキーとキラーズ、それ以来本質的には矛盾をはらみ続けているわけで、それでも何となくやってきているのは「男女対抗」の部分は紅白生まれてからずっと緩い茶番に過ぎなかったからこそで。
今年も仲良くみんなで観ましょう。