カバーアルバムのこと

昔、「カバーアルバムデータベース」というのをやっていたのですが、十数年前にやめました。
主に日本でカバー曲ブームというのが勃発してリリース量がエゲツないことになったのと、配信のみ楽曲とかアルバムリリース時の店舗別特典CDのみ収録の楽曲とか出てきてとても拾い切れなくなってきたことが主な理由です。

海外のカバー曲ブームは一時期と比較すると相当に落ち着いているのですが、日本では相変わらず「カバーアルバム」がリリースされています。
今年に入ってからリリースされた「ひとりのシンガーによるカバー曲アルバム」は、ざっくり拾っただけでもこれだけありました。

01/29:佐咲紗花 / SAYAKAVER.2
02/12:堀江美都子 / One Voice
03/25:H ZETTRIO / SPEED MUSIC - ソクドノオンガク vol.1
04/22:カノエラナ / 『尊い』~解き放たれし二次元歌集~
04/22:佐藤竹善 / Rockin' It Jazz Orchestra Live in 大阪 ~Cornerstones 7~
05/13:絢香 / 遊音倶楽部~2nd grade~
06/17:藤田恵美 / ココロの時間
07/29:ジェジュン / Love Covers II
08/26:五木ひろし / 演歌っていいね!
08/26:Ms.OOJA / 流しのOOJA~VINTAGE SONG COVERS~
08/30:鬼龍院翔 / うたってきりりんぱ
09/16:森口博子 / GUNDAM SONG COVERS 2
09/23:オオヤユウスケ / STEREO #2
09/23:Kitri / Re:cover
10/14:原田知世 / 恋愛小説3~You & Me
10/21:JUJU / 俺のRequest
10/21:町あかり / それゆけ!電撃流行歌
10/21:マーティ・フリードマン / TOKYO JUKEBOX 3
11/18:宮本浩次 / ROMANCE
12/02:城田優 / Mariage
12/09:Wakana / Wakana Covers ~Anime Classics~

また、「トリビュートアルバム」も、海外では1990年代にインディーズレーベルで「トリビュートアルバム」を出しまくる事態があったのですが、日本には何故か2000年代以降に飛び火し、というか主にソニーがことあるたびにトリビュートアルバムをリリースするようになりました。
今年になってからも4月にサンボマスター、9月に9mm Parabellum Bulletのトリビュートアルバムがリリースされています。

正味、カバーアルバムって便利なんですよ。
まず新曲を書かなくてもいい。筆が遅い人が契約をやっつけるとかのためには実に具合がいいです。
ミュージシャンもやりたい人は多いし、レーベルとしてもウェルカムなことが多いので、そりゃ出ます。かつさして有名ではない人でも有名な曲でそれなりに制作することができれば、聴いた人の耳を引き「これ誰?」みたいな形で認知も上げられますし、考えてみてもデメリットが見つからない。
トリビュートアルバムの場合は、元曲のミュージシャンは元より、カバーする方のファンの購入も見込めるので、ビジネス的なメリットも大きいのではないかと思います。

くらいの考え方でずっと来ていたのですが、でも最近は何となく別のニュアンスがあるような気がしていまして。
今年の場合は、ライブができない分リリースを増やすためにこういうアルバムを出すというのはあると思うのですが、ここ最近、今年であればJUJUや宮本浩次に顕著なのですが、あまりマイナーな曲を選ぶことなく知名度の高い「過去の名曲」を選んでくることが非常に多くなってきている気がします。

そこにビジネスとしての狙いがあることには間違いないとは思うのですが、JUJUの場合はファンからのリクエストが選曲がベースになっていて、このアルバム自体がファンサービスになっている。宮本浩次の場合はそもそも彼の歌うたいとしてのベースが歌謡曲にあるので、そのルーツを知ることができる形になっています。

そして、そういう「過去の名曲」を選んだ形になるのには、新たな「国民的ヒット」が過去最強に生まれにくくなっている今の世の中、過去の国民的ヒット曲を今の世の中に引き継いでいかなければいけないという意図を感じられて仕方がないのです。
新たに生まれないのであれば、今あるものの延命を図る。
果たしてそれが最適解なのかどうかはわかりませんが、今思い付く限りのことをするとすれば、そうなるのかとは思います。

ちなみに、「トリビュートアルバム」というのは、戦後のジャズではものすごい数が出ているのですが、ロック&ポップスとしては、過去調べた限り海外ではUKで1988年にJoy Divisionのが出ているのが自分の知る限り最古、1990年にニール・ヤングのチャリティ・アルバムとして「The Bridge」がリリースされたことで一般的認知が拡大したという認識。
日本では1995年にSIONの楽曲をカバーしたトリビュートアルバムがインディーズでリリースされたのが最初だという認識ですが、それ以前があったら教えてほしいです。
割と本気で。