配信でベストテンを占めてしまったこと

またチャートの話。
オリコンの最新の合算シングルチャート、瑛人の「香水」が2週連続1位ですが、今週のチャートの異常さはCDシングルチャートと見比べるとわかります。
CDシングルチャートの方を見てみると、1位はKing Gnuの常田の別プロジェクト、millennium paradeのシングルですが、これを合算チャートで見てみると11位。
要するに今週はCD売上の力が全く及ばず、ほぼダウンロード&ストリーミングのポイントのみでベストテンを占拠されてしまったということです。

前回も申し上げた通り、これはCDショップが多数休業していたり、新譜のリリースが延期されたりといった現在の特殊な事情によるものですが、でも数年後かいつか、いずれ訪れる状況を先取りして実現してしまったような感じです。

また、今週の興味深い点がもうひとつ。
オリコンとビルボードのチャートが非常に近しいという点。順位の入れ替わりはありますが、ベストテンに登場する楽曲はすべて同じです。
これは、CDの売上数が過去になく最小化したために、CD売上をポイント化する際に生じる差も最小に、そして現在ビルボードチャートはカラオケの指数を集計から除外していますので、結果として比較する値が両社今までにないくらい「共通」化してしまったが故の現象であると思われます。

瑛人に次いで2位に付けているYOASOBIは、ボカロ系のコンポーザーとシンガーソングライターの2人組。
調べてみると、小説&イラスト投稿サイト「monogatary.com」に投稿された小説をベースとして楽曲化するユニットということで、過去に楽曲の映画化・ノベライズというのは聞いたことがありますが、「小説のミュージカライズ」という、今のところは唯一無二のスタイルです。

「monogatary.com」に投稿された小説の中で評価の高いものには様々な賞が贈られる形になっていて、その中に「自分の小説を楽曲化・MV化してもらえる」賞というのがあり、その楽曲担当がYOASOBIという、かなりサイトの構造に深めに食い込んだ位置にいるユニットと言えます。

ですので、こういう状況下とはいえ、チャート上位に入ることでYOASOBIへの注目度が増えると、より一層「賞」の重みは増し、「monogatary.com」も繁盛するという仕組み。

瑛人もYOASOBIも現状はインディーズですが、「monogatary.com」がソニー・ミュージックの運営ですので、YOASOBIの方は恐らく紐付きです。
というか、今後その「賞」が新人ミュージシャンをデビューさせ、ヒットさせるための装置になる、ということになるのかもしれません。
広く訴求できるメディアがもうこの世にはないなら、狭くてもそこに集まる人間に確実に「刺さる」メディアを自分たちで作り出す。
こっちはこっちですごいことになっている。ソニーらしいっちゃソニーらしいんですけど。