オリコンシングルチャートのルールのこと

前回、SixTONESがソニー、Snow Manがエイベックスにもかかわらず、2レーベルから出たCDが合算される形で集計されましたが、類似の事例は過去にも松任谷由実とカールスモーキー石井のシングルであったよ、という話をしました。もうひとつ井上陽水奥田民生も、過去の全音源全く同じ内容のものがフォーライフとソニー両方からリリースされています。

ただ、過去事例の場合は、異なるレーベルに所属しているミュージシャンが個人的な関係を通して合同で音源を出すという話になった結果ではあり、SixTONES vs Snow Manの場合は合同の音源は収録されない「初」の事例と考えてもいいのですが、でも「既存のルールの範囲内でうまく立ち回った事例」というのが一番しっくりきます。

ジャニーズは過去にもそういう手を使っています。
カップリングやジャケットが異なる、つまり型番が異なる盤でも、同一シングルであると判断すれば合算で集計しますよ、という事例は現在当たり前ですが、「カップリング曲の異なるシングルを同日にリリースした」最初の事例は1985年にリリースされた少年隊の「仮面舞踏会」です。表題曲は同じですが、カップリング曲とジャケット違いで3種リリースされました。

が、これも無理くりという感じではなく、その時期に近い事例を挙げると、1983年に松田聖子のシングル「ガラスの林檎」がリリースされたのですが、カップリング曲「SWEET MEMORIES」がサントリーのCM曲として爆発的に認知されたことで、ジャケット違い&両A面にして再リリースされた事例がありまして、そりゃ当然合算して集計されるわけですが、そういう過去の例を踏まえてリリースされた結果が、少年隊のそれなわけです。

で、ジャニーズ以外にもいろいろあります。
1999年にはGLAYの「サバイバル」が「ビデオシングルのみでのリリース」にもかかわらず、何故かシングルCDチャートの1位になるという事例がありました。
何かいろいろあった結果であることは容易に予想できるのですが、その後さすがにそれは無茶やろというツッコミが入ったのでしょうか、それ以降「ビデオシングル」「DVDシングル」がCDチャートで扱われたという事例は、GLAY自身のDVDシングルを含めてありません。

また、シングルチャートは元々はドーナツ盤のチャートでしたので、長い問2曲以下の収録であることが条件だったのですが(以下というのは、たまに片面のみ1曲のみの盤があったから)、1980年代になって12インチシングルがブームになった1984年頃、佐野元春が「Extended Mix」と「7inch Version」「Instrumental」の3トラック入り盤とか、吉川晃司が過去曲のリミックスを3曲収録した盤を出したりすることから、だんだんなし崩しになっていきます。

ただ、この頃はまだ7インチ盤と12インチ盤で同じタイトルのシングルがリリースされても合算されず別々に集計されていました。
内容が異なる盤がひとつの楽曲として合算されるようになったのはいつから、というのは具体的に見つけられませんでしたが、恐らく7インチ盤と8cmCDシングルの併売期、8cmCDの方にだけカラオケが収録された、というのが最初ではないかと思います。
もしかしたら遥か昔に7インチとカセットで微妙に内容が異なる事例もあったかもしれないですが。

1997年の「めざせポケモンマスター」では4曲収録されてもシングル扱いされるように(盤にはタイトル曲のカラオケも入って5トラック収録)なりました。
そして1999年7月、浜崎あゆみの「Boys & Girls」で、新曲は表題曲1曲のみですが、リミックス6トラックと過去曲のリミックス2曲という10トラック収録の盤が「シングル」扱いとなり、翌月の「A」では新曲4曲収録+リミックス10曲の合計14トラック入りの盤も「シングル」ということに。

それ以降は正味、当時の浜崎あゆみ以上に無茶する人が現れないためか、結局、現在の「シングル」の定義は「オリジナル新曲4由以下」「ライブブァージョンやリミックス等のヴァージョン違いは過去曲なら制限なし」という、浜崎あゆみ期のルールが今も基準のようです。
ただ、松崎しげるの「愛のメモリー」のヴァージョン違い12曲収録が「メガシングル」としてシングル扱いだった一方、織田裕二の「Love Somebody」のヴァージョン違い12曲収録がアルバム扱いだったり、境目にある盤は売る方の都合でけっこうどうとでもなっていたりとか。

ということで、シングルチャートのルールというのは、明確なルールは時々にあったにしても、ちょいちょい変更がかかりがちだ、ということはよくわかります。むしろ既存のルールに収まるように作戦を考えているジャニーズはけっこう律義ではないか、というのが感想です。
というか、2020年にシングル盤を売ろうと頭使うこと自体、もう他になかなかいないと思います。