昨日のNHKスペシャルが大変にヤバかったわけですが。
やっていることがそもそもすごいのだけど、いろいろ困難にぶち当たると、和也所有のテープが出てくるとか、単なるひばりオタとしての天童よしみが登場するとか、森英恵も当時のヘアメイク担当も出てくるとか、必要なパーツが嵌っていく形で乗り越えていく、番組としてのストーリーもすごかった。
そしてそのストーリー展開の中で、具体的な説明はなくとも「本件の実現にあたっては重要なところを全部きちんと巻き込んでますぜ、ものすごい公認ですぜ」というところが全部理解できるところも。
正味こういう企画は、見る人によっては倫理観的なところでどうしても引っかかる人もいるかもしれませんが、その「公認」と、番組内でのすごい勢いの「肯定」が、そういう人たちの気持ちへの抗弁として確実に機能する。
全くもって隙がありません。
秋元康氏を連れてきたところも素晴らしい。
前々から「秋元康氏の活動は総じてフェイクであるが故に意味がある」ということを申しています。
「川の流れのように」の作曲は、元・一風堂の見岳章。秋元×見岳ペアといえば初期とんねるず。ビクター時代の「成増」「仏滅そだち」の収録曲はほぼ全曲このペアでの制作です。それらの楽曲の多くは、アイドル歌謡風であったり、ムード歌謡風であったり、チェッカーズ風であったり。
そのペアが制作した楽曲が結果として美空ひばりの代表曲の1つとして認識されているということは、これは「フェイクの到達点」とも言えるわけで。その30年前の実績を引っ提げて今回まさに存在ごとフェイクになった彼女への新曲を制作する。
正直、これは30年越しの伏線の回収と言えるレベルの事象だと、思うのです。
あと個人的にたまげたのは、新曲披露時のクレジット。「作曲:佐藤嘉風」。声が出ました「えーーー!」。
何でかというと彼は私が推し気味のアイドルグループ、ヌュアンスのサウンド・プロデューサーなんですよ。彼の曲に過去にも痺れているのですよ。それがここに来てこれ。
「何で?」ということを仲間うちのLINEにぶち込んだところあっさり回答。乃木坂46のカップリング曲を書いているんですね。その流れで本企画のコンペにも声がかかり、結果こうなったと。
同時に「これからのヌュアンスはどうなるのだろう」という、一抹の不安も。というのも、この企画がこの1番組で終わるとは到底考えられないのです。
たとえばNHKの自然系の番組であからさまにお金がかかっている企画の場合、だいたいが国や学者と組み、しかも続編も何度も放映するという形が常。しかし今回は、これだけの重要人物を巻き込み、コストと期間をかけているにもかかわらず、どこか他の団体と組んでそこからお金が出ているという様子もない。
とすればこういうネタです、「大変予算を持っている別の番組」からお金が出ているのではないか、と考えるのが自然です。この件をツイートした際のリプでもいただきましたが、恐らく年末あたりの。
なので、どんどん嘉風さんもこっちに持っていかれたり、他のもっと大きな企画の方に連れていかれたりしまうのではないかという、そういう不安。
ともあれ、ここで終わりではないでしょう。放映後にツイート検索してみたところ、歌・声については概ね好評、ただしCGについてはネガが多めという感じ。
恐らくここらへんの声を拾いまくってはブラッシュアップを繰り返し、大晦日のNHKで「HIBARI Ver.3.14」とかそういうのが登場することになるのではないかと思います。
そして、ヤマハもこの企画に協力してただ終わりのはずがありません。これは自動車メーカーで言えばF1レースのようなもの。ここでのエクストリームな経験を製品に生かし、VOCALOIDの6か7か、もしくは「VOCALOID PRO」のような形か、培われた鬼の仕様はいずれ製品化されるかもしれません。
リリース時の初回限定版には当然ひばりライブラリが同梱され、「行くぜっ!怪盗少女」も「撲殺天使ドクロちゃん」も「お姫様は電子音で眠る」も「千本桜」も高次倍音込みのひばりヴォイスで歌わせ放題に。そして小林幸子が失業するのです。