最近の楽曲の長さとToolのアルバムのこと

「曲の長さ」という点で洋楽のこれまでをざっくり振り返ると、60年代半ば頃までのポピュラー音楽はシングル盤で1楽曲単位で提供するのがメインで、その頃の楽曲はだいだい3分前後。それはドーナツ盤の収録可能時間とラジオでかかることが前提の長さでした。

それがビートルズ辺りからアルバムをメインとした方針が多数派となり、その結果1曲あたりの時間は長くなっていき、それでもラジオでかけてもらいやすくするために、シングルカット楽曲には「Radio Edit」ヴァージョンなんてものが作られるようになったりして。

それがCDから配信・ストリーミングになり、YouTubeでの視聴も前提とする聴かれ方がメインとなることで、またアルバムではなく楽曲単位での提供がメインとなってきたわけですが、そしたらまた多くの楽曲が3分前後の長さで提供されるようになっています。以下今週のビルボードHOT100の上位10曲。

01.LIZZO / True Hurts (2:53)
02.Shawn Mendes, Camila Cabello / Senorita (3:10)
03.Billie Eilish / Bad Guy (3:14)
04.Lil Tecca / Ran$om (2:11)
05.Lil Nas X Feat. Billy Ray Cyrus / Old Town Road (2:37)
06.Chris Brown Feat. Drake / No Guidance (4:20)
07.Post Malone /Circles (3:35)
08.Ed Sheeran & Justin Bieber / I Don't Care (3:39)
09.Khalid / Talk (3:17)
10.Post Malone Feat. Young Thug / Goodbyes (2:54)

もう物理的な制限もないし、ラジオでかかることも前提としなくていいのにこの長さというのは、もっと根源的な「人間の集中力」というか飽きずに全部聴いてもらうにはこれくらいが最適とか、経験則的なものにしろ、明確な理由はあるのだろうと思います。

思うのですが、そういう世の中に割って入ってきた重厚長大界の帝王、Toolの13年ぶりのアルバムがアルバムチャートで1位になってるのに笑う。

01.Fear Inoculum (10:20)
02.Pneuma (11:53)
03.Litanie contre la Peur (2:14)
04.Invincible (12:44)
05.Legion Inoculant (3:09)
06.Descending (13:37)
07.Culling Voices (10:05)
08.Chocolate Chip Trip (4:48)
09.7empest (15:43)
10.Mockingbeat (2:05)

この、今の世間に迎合する気の無さ最高だし、2位に落ちたTaylor Swiftのファンが曲の長さ見てビビっていたのも最高ですが、でも過去作考えても10分超の曲はアルバムに1-2曲だったのが今回これって、彼らにとっても相当にやりすぎ感がある。
つまり、配信だからどうということは全く考えてないけど、今作ではCDの収録可能時間ということもあんまり考えていなかったのでは、ということが予想できます。
そういう考え方であれば、旧来のアルバム型ミュージシャンとしてはけっこう今にマッチさせた事例と言えなくもないですが、それでも「完全生産限定盤」としてのみ、パッケージも発売予定
パッケージではインタールード的な3曲は除いての7曲なのでCD1枚に押し込むのかと思いますが、それでも79分10秒。ギリギリ1枚に入るか入らないか。
「完全生産限定盤」はジャケットに液晶スクリーン搭載という、だいぶ頭おかしい仕様ではありますが「熱心なファンからできるだけお金出してもらう」ための方策としては相当にアリだと思います。

にしても、Pink Floydのライブアルバムのジャケットに赤いLEDが埋め込まれているのを店頭で見て「すげえ!」と思った頃から約四半世紀。時代が進みすぎておっさん辛い。