ヌュアンス@渋谷O-EASTのライブのこと

自分が実際に観て感じた限りの「日本三大アイドルライブ」は以下の通りです。

1)2011年2月25日:ももいろクローバー@SHIBUYA-AX
Zが付く前の6人時代、神聖かまってちゃんとの2マン先攻。伝説の7曲30分ノンストップ。その場にいたどちらかといえばかまってちゃん寄りの非アイドル派を、すごい勢いでアイドルに転ばせた罪深いライブ。当然自分も転び、これ以降他のアイドルの現場にも行くことになります。

2)2015年12月20日:ゆるめるモ!@Zepp DiverCity
名盤「You Are The World」リリースツアーのファイナル。その前もその後も何度かライブ観ていますが、間違いなく現段階での彼女達のキャリアのピーク。本編ラスト「Only You」のえげつないレベルの狂騒とカオスは今思い出しても胸に来る。

3)2018年5月27日:amiinA@渋谷WWW X
miyuちゃん加入から始まったコンセプチュアルな世界観をステージ上に完全再現した緻密なライブなのに、SE・ダンスのみ楽曲からの「Jubilee」でいきなりフロア大爆発、以降完全にフロアを掌握した女子2名に気持ちよく転がしまくられた夜。

よいライブというのはアイドルでもそうでなくても、2種類あると思っています。「楽しい」のと「すごい」の。で、稀にその2つを高いレベルで両立しているのがあって、「日本三大アイドルライブ」は全てそれだと思っています。
あと、その3つのライブの共通項としてもうひとつ、「フロアの盛り上がりにおもねっていなかった」ところが挙げられます。アイドル達が歌い踊り、フロアは声を出しオタ芸を打って盛り上がる。その相乗効果で会場全体がアガるのもそれはそれでよいものですが、この3つのライブは「客に助けてもらって盛り上げをはかる気ゼロ」、一方的にアイドルから提示されるライブ自体がとんでもないレベルであり、受け手はただそれに転がされるのみという「強度」を持っていました。

そして昨日「最強のアイドルライブ四天王」として今回のヌュアンス@渋谷O-EASTを加えました。結局そういうライブだったからです。

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以前横浜出身の友人と話をしていた時に「首都圏以外の出身だと首都圏って全部同じに見えると思うけど、横浜から見ても東京は微妙な距離感と違和感、どこか違う場所という感覚があった」というようなことを言っていました。
ヌュアンスの横浜ローカルアイドルとしての立ち位置もそんな感じで、ニューアルバムのタイトルが「town」だったのも「CITY」ではないというところでそういう意味付けができます。
王道には乗れない距離感や違和感は、このグループでは楽曲もパフォーマンスも何となく、でも確実にある「揺らぎ」のようなもので表現されていて、昨日はそれが彼女たちの武器として最強に極まっていたと思うのです。

正味の話、この4人は歌唱やダンスも含め、テレビによく出るようなトップアイドルに比べれば実力的には相当劣ります。
でもあの現場には、4人が1時間半の間、日本一のアイドルでいられるためのありとあらゆるホスピタリティが用意されていました。他の演者もバンドもゲストも演出も照明も音響もO-EASTという会場も、全部が全部4人を輝かせる装置として周りを取り囲んでいて。そしてそれらに支えられた結果の彼女たちの「揺らぎ」あるパフォーマンスもひたすら美しくて。
フロアも所謂アイドルオタク的なノリは皆無、でも間違いなく徐々に場の感情は高まっていることはわかる。最後にははち切れんばかりの空気に満たされて、ああいう現場は最高に気持ちいい。

前からずっと言ってるけど自分は「『アイドル』とは女の子そのものを指すのではなく、女の子がそうあろうとする意志のことを指すのだ」と思っているのですが、このライブ中のヌュアンス4人はだから最高のアイドルだったんですよ。

正直それでも彼女たちはまだ「地下」です。
でも、何組か他のアイドルグループの子達が観ていたようですが、彼女達が自分の活動に戻った時、この日観たものは「勇気」になるのではないかと思いました。そしてその勇気がまた次の何かに繋がれば、と思います。私はそういうものを観ていたい。

ただ一方、観ていた女の子達があのレベルの演出を自分とこの運営に要求したりするんだろうかと思うと、それは運営が不憫でならない。
あのステージはフジサキPという、「アイドル」を信じすぎて頭がおかしくなった人だからこそ可能だったわけで、合理的な判断をしつつビジネスとしてできるだけリスク取らずに回せる「有能な」運営ならできるはずがないことで。
いや、でも昨日のを観て新たに頭おかしくなる運営も出てくるかもしれない。私はそういうものを観ていたい。