今日は音楽以外のことを書きます。「よつばと!」の14巻が出たので。
学生の頃、演劇部に入っていまして、大学時代はだいたいそれ一色で、そこで音響効果の研究とかで音楽もジャンル問わず聴きまくったことが今にもつながっているのですが、脚本を書こうともぞもぞしていた時期もありました。
いろいろアウトプットしつつプロットを考えているうちに引っかかり始めたのは「どうドラマを作っていくか」の部分。「特殊な能力がある」とか「謎の生命体が現れる」とか「未曽有の災害が起きる」とか、そういう突拍子もないことを題材にストーリーを作ることに、次第にものすごい違和感を持つようになってしまって。そんな前提に話を盛っていくのって都合よすぎないかと。そういう設定の名作が山ほどあることは無視してそう思ってしまったのです。
そうなると、普通の人の普通の生活を淡々と描く、それを一本のドラマとして成り立たせることはできないのか、ということを悶々と考えるようになり、でもそんなんやすやすと出てくるわけもなく完全に煮詰まって諦めてしまったわけですが。
で、一番最初に「よつばと」を読んだときにそのことをすごい勢いで思い出して。「この手があったか」と。幼い子供の目線を通せば我々がぼんやり過ごすような普通の1日もすごいドラマになりうるのだと。コロンブスの卵状態です。
「あずまんが大王」のときは、ストーリーとして紡がれることがなかったからか、面白く読んではいてもそういうことは思わなかったんですが、でも「あずまんが大王」の方法論が他の作家さんにすごい勢いで流用されまくったものの、今はもう完全に突き詰めて誰も容易に真似しようがないレベルで作品を生み出していることは間違いなく。
そして前の13巻あたりから思っているのが「何かどんどんミニマル化してないか」ということ。
それまでは何がしかの「事件」的なことは起こりがちだったのですが、13巻14巻は新しい人は出てきてもさしたる事件は起こらず、普通の生活の中にその人たちが入っていくばかりで。
実際ネットを見てみると、13巻以降「劣化した」「つまらなくなった」という方も結構いらっしゃいます。多分そういう方は他の大きな起伏のあるストーリーマンガも好んで読まれている人なのだろうなと思って。この何も起こらなさがついに「許容できる起伏のなさ」を越えてしまったのではないかと。
ただ、自分は「もっとやれ」という気持ちの方が強く、今後こっちの方向をさらに期待しています。
今、自分がちゃんと単行本を全部買い求めているのは「よつばと!」と、あとは連載は先日終了した「レッド」だけで、単行本の出なさっぷりと、ストーリーの起伏のなさは双璧を成してます。とはいえ「レッド」の場合は起伏はなくてもやってること起こってることはことごとくエグいので、逆に困ります。