Shame「Songs Of Praise」のこと

Shame / Songs Of Praise (Album)

80年代のUKにThe Chameleonsというバンドがいました。湿り気を帯びたような流麗な薄いノイズと繊細なメロディーとギターの旋律で2枚のアルバムまで出したところでそこそこの人気を博したので、そこで次にアメリカ進出を目指します。
アメリカ市場を意識して3rdアルバムを鋭意制作したのですが、出てきた音が何か中途半端に太い音になっちゃったというか、確かに従前の彼らの個性は残しつつ、でもアメリカっぽいのだけど何かアーシーでサザンロックっぽい匂いまで少しする、何でそんなとこ行っちゃったのと言いたくなるような音が出てまいりました。
今聴いたら悪くないというか、これはこれでありというか、よくぞ「UKニューウェイブ」と「アメリカのルーツロック」というほぼ相反する命題に対して、ここまで正解に近い、他にない音を作ったなとは思うのですが、頑張ったのにアメリカではほとんど売れず、結局それで解散しちゃうわけです。21世紀になって再結成しましたが。

このShameを聴いてそれを思い出しました。間違いなくUKニューウェイブ直系のギターサウンドなのに、その音からは湿り気をほとんど感じないのです。ヴォーカルは時折オリジナル・パンクに突っ込むような乱暴な歌い方もしたりして。
ニューウェイブは元々、70年代バンドへのカウンターであったパンクの更にカウンター的な位置付けとして出てきた部分もあるわけですが、サウス・ロンドンのこの若者たちにはそんなこっちゃどうでもいいんだろうなと。大変に健全です。
しかしこのヴォーカルの男の子からは、馬鹿売れした途端に薬に手を出してダメになっちゃいそうな不健全な雰囲気も感じるので、ほどほどくらい売れてほしいと思います。

ちなみにThe Chameleonsのファンが集まると、再結成前のオリジナル・アルバム3枚のうちどれがいいかで殴り合いの喧嘩が発生しがちですが、私は断じて2nd派です。譲れません。


そして、The Chameleonsの3rdアルバムからシングルでリリースされた曲も。ニューウェイブっぽい音色でサザンロックっぽいリフを弾くという意味の分からなさ。最高。