マジペパとPerfume Geniusのアルバムのこと

アルバム2枚。

マジペパ / テル・ディスコ(Album)

ようやく聴きました。
ソロアイドルの吉田凜音が西寺豪太郷太他とバンドを結成し、そのバンド名は元々は「吉田凜音」というマリリン・マンソン方式だったのですが、さすがにわかりにくすぎるか短期で「マジペパ」に改名してのアルバム。
最近流行りのシティポップ系列の流れに置いたとしても相当な良作なのですが、これの何がすごいって「吉田凜音の声をいかに魅力的に聴かせるか」というただひとつの目的に対して全てのメロディ・歌詞・演奏が奉仕していること。

リンネラップだけだとわかりにくいものの、アイドルとして歌っている彼女の声は、かつてのアイドルファンのハートを打ち抜くだけのものを持っているのですが、もうこの楽曲・演奏に乗った彼女の声はもう何か神がかっている。
コテコテのアイドルソング風にプラスアルファがあり、そこがとても愛おしいM-8、敢えて音符の上がり下がりが少ないメロディにしているからこそパートごとの歌い分け方が冴えるM-4、そしてリードトラックM-1「備長炭」のサビ「びんちょうたん」の「たん」の部分の発声はもう完璧すぎてそれだけで丼飯3杯食えそうです。

最近の「楽曲派」は得てしてオルタナティブ方面に行きがちですが、そうでなくてもこれだけできるのです。というか絶対こっちの方が難しい。でもこのアルバムを聴いて一番近いと思ったのは全盛期の森高千里なので、胸を張って「王道」と呼ぶ勇気はありません。


Perfume Genius / No Shape (Album)

2010年、彼の1stアルバムを初めて聴いた時の衝撃は今も忘れません。「薬物中毒でボロボロになり、そのリハビリとして自宅のベッドルームで楽曲制作を行った」そのデモテープを何の再録も加工もしないままCD化した、ヒスノイズだらけの心底よれよれでぼろぼろの音。でも再録等行わなかったからこそいちいち響く音になっていて、私が18歳の時にThe Pastelsに出会って以降ずっと思っている「ポップミュージックの素晴らしさは技術が前提にならないところにある」という意識を他にないくらいに裏付けてもらった感のあるそんなアルバム。
予想はしていたものの2ndアルバム以降録音環境はリッチになり、それなりに良い楽曲ではあるものの、1stを愛した所以が所以だけに「コレジャナイ」感がやっぱりありまして。

そんな中出てきた今回4枚目のアルバム。クレジットを見る限りスタジオでちゃんと録音しているようなのですが、PLAYボタン押した途端出てきたのはくぐもったピアノととてつもなく抜けの悪いヴォーカル。敢えて音質を汚すという通常あり得ない戦術を用いてきました。

でも俺馬鹿だからそんな手に引っかかるんですよ。すごくいいんですよ。そりゃ全編通して悲壮感と救われたい感の塊の、直接ハートをえぐりに来るような音だった1stには届きません。それでも2nd以降に培った多彩なアイデアを伴ったレンジ感の大きな音源が糞みたいな音質とともに放たれると、パブロフの犬状態でキャンキャンするわけですね。
ああ、もうこれは仕方がない。大好きだ。