リーガルリリー / the Post (Mini Album)
小学2年生の時のクラスメイトにとおるくんという子がいました。
今考えればとてつもないクリエイティビティを発揮する子で、新しい鬼ごっこのルールを思い付いたり、縄跳びの新しい飛び方を開発したり、給食のコッペパンをくり抜いて謎のオブジェを製作したり。でも一番覚えているのは、当時全盛期だった特撮ヒーローもののごっこ遊びをしていた時のこと。
ヒーローにやられる怪人は少なくとも生き物のはずなのに、ヒーローのキック等で強い衝撃を与えると、何故か最近で言うところのGalaxy Noteのように大爆発を起こす性質を持っていたものですが、その爆発音を口で真似て僕たちが「どかーん」とか「ずぎゃーん」とか言ってたところにとおるくんは「きゃっぼわ」と言ったのです。
何だよそれと僕たちが笑うと、とおるくんは「テレビ見てちゃんと聞きなよ」とだけ言いました。帰って夜にテレビのヒーローものにチャンネルを回してちゃんと聞くと、本当に爆発するときの音は「どかーん」ではなく「きゃっぼわ」でした。
今ならわかるんです。まず着火音、それからの本爆発の爆発音、間違いなくその擬音が一番近い。でも小学2年でそれっていうのは何だったのだろうと今改めて思うのです。
僕らは小さい頃から太陽を赤く描いていたし、爆発音も「どかーん」でしかなかった。結局当時から今に至るまで、とおるくんのように自由に聞いたまま感じたままを言葉に形にすることができないままずっと生きてきてしまっているわけで。
リーガルリリーを聴いてとおるくんのことを思い出したので書きました。きっとこの18歳の女の子たちは、とおるくんのような子たちなんだろうなと思ったのです。
闇雲な衝動は何となく感じられるけど、正直、とても難解な歌詞です。これをそんな女の子たちが提示するって何なのだろうかと考えると、僕らが本当は聞いているのにアウトプットできなかった音、見ているのに描けないもの、経験したはずなのに言葉にできないことを、その自由さでもって表現したらこうなるのかもしれないと思うのです。
だから正味、最近受けているガールズ・バンドのような「共感」の部分は極めて少なく、「それが伝わる」層には熱狂的に受け入れられはしても、大きなポピュラリティは得られないかもしれません。
これだけの才能です。恐らく既にメジャーレーベルがマークしているでしょう。そして「もっと共感できるような歌詞を」と言ってくるかもしれません。でももしそういう話があったとしても力いっぱいガン無視していただき、己のままに歌っていただきたい。
そして経験を積んで、自分の見える景色を今より少しだけ平たい言葉で表現できるようになったとき、もしかしたらすごいことになるかもしれないと思います。すごいことになってほしいと思います。
そしていつか広く知られるようになり、フロントの女の子が童顔のガールズバンドは間違いがないという、サンプル数もさしてないあさっての方向のジンクスを作り出してほしいと、切に願います。
とりあえず生で観たくて仕方がありません。11月21日、新代田FEVERでお会いしましょう。