レキシ 「Vキシ」のこと

レキシ / Vキシ (Album)

もう先に上半期の10枚に入れてしまった後で大変にアレなんですが。
レキシのここ数年の限界はつまり、2曲の超アンセム「きらきら武士」と「狩りから稲作へ」を収録した奇跡の2nd「レキツ」を越えられないところだったわけですが、今回その2曲を越える名曲こそないもののアルバムトータルでは最高傑作が出てきた感がありまして。
これまでにないレベルの自由度の高さとその結果生まれる混沌とした空気が盤の全体を包み、それでも池ちゃんの場合、何をどうやってもポップから外れることはないため、完全にタガは外れているのに聴きやすくて楽しいという唯一無二の世界観に突入しています。

Bメロは池ちゃんぽいなと思いつつも聴こえてくる音の95%はキュウソネコカミが出しているのに堂々と「レキシ」名義のM-2、「コキントシンコキン」のフレーズが耳触りよすぎてキャッチー過ぎて痺れるM-4、アジカンのゴッチがこんなくだらない歌詞を歌っていることに違和感しか感じないM-5、チャットモンチー馬鹿丸出しだけど楽しくて仕方ない感だけはひしひしと伝わるシングルM-6、もうラップですらなくなっていますが弄りよう使いようによっては第3のアンセムになる可能性を秘めたM-8、ピアノをバックに松たか子が朗々と美しい歌詞を歌い上げるものの、サビの歌詞の「幕府」という一言で全部台無しになるM-10。

好きにやればやるほどポップスとして冴えわたるこの構造はある意味奇跡だと思うのですよ。すごいバランス感覚のポピュラーミュージック。

そしてフェスやら口コミやらでどんどんライブの評判が広がった結果、アルバム2万枚売れてないのに日本武道館完売という状況だったわけですが、今回は初週で22,000枚まで行きまして新記録更新。前々回、前回の話の続きで言えば、サザンSMAPが期待できない今のビクターにとっては星野源に次ぐ期待の星なわけです。ムックなんかも出たりしてるし。何でそうなっちゃったのはわかりませんが、でもアフロのイケメンでもないおっさんがその音楽ひとつでそういうところまで行ってるっていうのは、非常に楽しい光景です。正味「タモリ倶楽部」以外にもテレビ出して好きなようにやらせたら、けっこうなスターになりそうな気もする。本人がどう思うかは別にして。