蓮沼執太 / メロディーズ (Album)

前回の続きみたいになりますが、最近の邦楽で一番弦の使い方が好きなのが蓮沼執太フィル。決して弦が主役という位置付けではないのだけど、全体的に他のJ-POPに類を見ないレベルで弦を含めて「豊かな」音楽でした。
その蓮沼執太のソロ作。元々は一人で電子音楽やってた人がインスト物をやり、歌も歌い出し、バンド形式もやり、15人編成を経てこういうこれまでないレベルの「歌モノ」を出してくる。

ボカロやってた人が世に出たときに生歌でやるとか、一人で宅録やってた人が世に出てきてバンド形式になるとかはよくあることなのですが、今回彼は一度広げたものをもう一度コンパクトな形に戻してきたわけで、どういう意識のもとでなのかというのも気になるのだけど、またこの出てきた音が非常にフラットなのが。いろいろな意匠は施し、彼史上最もポップな音であることは間違いないのだけど。

あれですよ、その後「LIFE」で異様な多幸感をぶちかます小沢健二やら、今や華やかなだけでなくそこはかとエロスまで孕んだ歌を歌う星野源の初期の頃、「犬」とか「ばかのうた」あたりの音を思い出す質感。

ここが改めての初期値になるということなのだろうか。間違いなくこの先どこにでも行ける音だし。
とりあえずパッと聴いた時はフィルのような厚さや豊潤さがない分、ちょっと物足りなく思ったんだけど、「犬」と同様、最初に聴いた時より2度目の方がよく聴こえたので、これはきっといいアルバムです。