VIVA LA ROCKの話の続き。
正直に言えば、もう新しい世代のバンドの音についていくのがしんどいと、ちょっと思ったのですよ。
今回出演したthe telephonesKANA-BOONキュウソネコカミゲスの極み乙女。KEYTALKあたりはちょっとアップテンポな楽曲になった時点でBPM170越えしていくわけで。キュウソネコカミなんて曲によっては200越えます。
おっさん世代で速い曲と言えばユニコーンの「大迷惑」やらDragon Ashの「Fantasista」あたりですが、当時「何この滅茶苦茶速いの」と思った、そんなテンポ感をごく当たり前のように標準装備して、アリーナで輪モッシュというか、一旦フロアを丸く開けてから曲がブレイクしたタイミングでその輪の中に走り込んでいくやつに興じる若者が今はどっさりいるんですよ。やってる方も受け手の方も明らかに新世代。
いや、このスピードでそれ無理。おっさんだから無理。

この流れに対してはバンド側にも意識的な動きをする人もいて。たとえばthe telephonesはフロントの石毛くんがソロでは非常に内省的な音を鳴らしていることから、the telephonesとしては世に求められているロールを全うしようという意志が見て取れるし、逆にゲスの極み乙女。の絵音くんは先日のメジャーデビュー時のインタビューで「速い曲はやめた」「今の世代のバンドの音からは降りた」ということを言っています。

また、そんなに速くはないSHISHAMO。ステージの時間帯はちょうど裏がミスチル桜井だし、3番目のステージの演者の中でも知名度下から数えた方が早いし、カツカツになることはないだろうなと思っていたけれど、蓋を開ければ入場規制かかってて、早めに入ってよかったと胸をなでおろしたわけですが、でもたとえば裏がクリープハイプだったら決してそういうことにはならなかっただろうなと現場で思って。要するに、おっさん世代の有名人の看板なんてどうでもよくて、有名だからとりあえず聴くという行動を取らない若者がそれだけいるということ。
実際、SHISHAMO終わってウカスカジーの後半ちょっと観たんですけど、アリーナの後ろの方は最後までスカスカで、SHISHAMO入れなくても終わってもとりあえずこっち観に来るという選択すらしなかった子も多かったということで。

でもそんな彼らの感覚、自分も似たようなのは昔知ってた。90年代のクラブ。
内装やらブランドやらで客を呼んでいた「ディスコ」があっという間に消えてなくなり、そこにいるDJがかける曲がかっこいいかどうかが全ての場所が生まれて、一晩中グダグダになるまで踊って飲んで。もちろんすごく気に入った曲があったらブースまで行って「これ誰のなんて曲?」って聞いて、次の休みにレコード買いに行ったりもしたけれど、でも少なくともその場においては誰のどの曲が有名かとか周囲やDJの振る舞いとか基本どうでもよく、自分が気持ちいいということが全てに優先していました。

まさに今の若い子はフェスをまるでクラブのように使って遊んでるのだなあ、と思ったんです。そりゃライブに客入ってもクラブは潰れるわけですよ。


もう一つ象徴的だったのがドレスコーズ知名度的にもキャリア的にも抜群だし、我々の目から見たら間違いなく素晴らしいパフォーマンスで志磨くん死ぬほどかっこよかったんだけど、でもフロアが埋まらない。
だから、そういうことなんだと。アガる曲は必要だけど、カリスマはもう必要ない。アンセムはあるべきだけどスターはいらない。まあ、志磨くんはおっさん世代か更に上の音楽を聴いている人だから今の子たちにはアジャストしないっていうのもあるだろうけど。でもその全く逆の位相に、デビューした時は「何ちゅう刹那的なイロモノやねん」と思っていたMan With A Missionがいて、彼らが売れ続けている理由が何となくわかったんです。顔が見える必要なんてないから。アガる曲を提供してくれる信頼のおけるバンドであればいいから。


3日間どっぷり現場に浸かってようやく体で理解したわけで、今後またどんどん変わっていくシーンを自分がいつまでキャッチアップし続けられるのかという不安はありますが、そもそも自分が10代の頃リアルタイムで鳴っていた80年代UKにハマったのも、60-70年代の「古臭いおっさんの音楽」からいかに距離を置くかという方向での結果でもあったわけで、似たようなことが自分がおっさんになった今繰り返されているだけの話だとも言えます。
少なくともあの時あの場にいた、若いのにこの今の世の中で音楽のために1日1万円、3日通したら24,000円を払ってまでやってきた馬鹿野郎たちは、もうそれだけで愛すべき存在であり、何とかして彼らの感覚についていきたいと思った次第。しんどいけど。