サマソニ、今年はあんまり右往左往せず、でもALT-JとBABYMETALとPet Shop Boysはマストで、という方針で臨んだ結果、以下13組。


VOLBEAT
元々最初andorop観に行こうかなと思いつつ、バンド交換がマリン側だったのでそのままビール飲みたさにマリンへ直行。ので全く前もって聴いてなくて、バンド名から勝手に尖った感をイメージしていたのですが、いきなりいなたさ炸裂。正しく重く正しくダサい正統派ハードロック。しょっぱなからこれですから暑さも相まってビールが進む進む。ゲラゲラ笑いながら見ているうちに終了。死ぬほど暑いけど楽しい。


ONE OK ROCK
前に観た時より演奏力も向上していてものすごくかっこいい。以前よりもシンプルになってむしろよくなってきた感じ。が、前回も感じた全体的な音像の「軽さ」はいまだ健在。というかこれはもう体質として如何ともしがたいのか。この手の音を演るにしてはけっこう大問題だと思うのですが。PAエンジニアにもう少し何とかしてもらえないのだろうか。星飛雄馬みたいなバンドだと思った。


ALT-J
そもそもアルバムがセッションの結果を録音しましたみたいな感じだったわけで、そりゃライブ間違いないであろうことは容易に予想できたのですが、これがまた予想以上にいい。奇をてらうことなくアルバムとほぼ同じアレンジで演奏するのですが、曲を追うにつれてじんわりとゆっくりと熱くなってくる心持ちはライブならではの感覚。本当にこのバンドは大好きだ。


BASTILLE
UKで1位というPOPと共に店頭に置かれていたCD試聴した時はいまいちピンと来なくて購入に至らなったのですが、ライブで観るとかなりいい。正味のところ最近よくあるタイプの音ではあるのですが、UKでその中かき分けて1位を取るのはやっぱりこういう地力のあるバンドなのだと改めて理解した次第。


BABYMETAL
今までに見たことのないものを見た感。「新たな興行の形」が発明されているのを見たというか。
本物のメタルマニアも認める本格メタルサウンドに乗って踊り歌う可愛い女の子。ぶっちゃけメタルやHRの世間一般的に言える最大の欠点は「演ってる奴らが概ねむさ苦しい」という一点に尽きるわけで、そこをこういう方法論でもって完全にクリアした段階でいろいろとOKになるのは当たり前のような気もしますが。

AXでももクロを初めて見た時「可愛い女の子は黙って立っていても可愛いんだから、それ以上可愛く見せる方向には敢えて力を入れず、その分偏ったベクトルにあらん限りのリソースを叩き込んだ結果『RPGのキャラの能力値の振り分けを偏らせ過ぎてバーサーカーみたいなキャラができた』状態になっている」的なことを言ったことがありますが、BABYMETALにもそういう類の著しい振り切れっぷりを感じます。何かもうあのわかりやすくTOO MUCHな空気感がたまらなくいい。ただ、3人本体にはそういう過剰さは感じられないのに、組み合わせとしてそういう空気が出てくるというのが、他にない感じ。

あと、「元ネタもあるよ的なガチメタルサウンドに乗せてデスボイスでシャウトする美少女」というのは、「細かいディテールまで描き込まれた戦車を操る女子高生」とか「異常にマニアックな設定で美少女に擬人化された戦艦」とかの世界観にも近いと思った。そういう意味でも「今」を体現しているユニット、なんじゃないかなと。


Cheap Trick
もうたいがいみんなおじいちゃんで、途中で他のメンバー一旦はけてドラムソロとかベースソロとか挟む構成からはあからさまに「体力の衰え」を感じないわけにはいかないけれど、それでもロビンは白いスーツに船長帽かぶってるし、トムのベースは12弦だし、リックは曲ごとにギター取り替えた挙句に5本ネックのギター持って来るし、もう全部が全部正しくCheap Trick。それ以上何を求めるのさという感じ。みんなで「サレンダー」を歌うととても楽しい。それでいい。


1日目はここで終了してひたすら会場でお酒を飲んで帰りました。

2日目。

ももいろクローバーZ
2ndアルバムツアーは大変にスリリングだったという話ですが、こういうフェスのセットの場合、もう恐ろしいくらいの安定感。
ただ「ココ☆ナツ」をやったとき、サビ2回めの円になって回るその円の直径の、マウンテンという巨大なステージに見合わなさ過ぎる小ささに気付き、2ndアルバムでの無闇なスケールアップは今の彼女達のサイズにとっては必然だったのだなあと改めて思った次第。
しかし人が多い。所謂フロントアクトを除けば2日目一発目という登場順は、夕方から別の仕事が入ってたからかなと単純に思ったんだけど、猛烈に集まるであろう観客を捌き切るためには確かに一発目にしか置き場所はないですわ。


でんぱ組.inc
アッパーな楽曲を隙なく並べる攻撃的なパフォーマンス。
前週のROCK IN JAPANと並んで彼女たち史上最大のステージ、「W.W.D」の歌詞が異常に感動的に聴こえてちょっと胸に来るものがありました。そしてあとでこの日の衣装はその「W.W.D」のジャケットの衣装だったことに気が付いて、彼女達もきっとそういう気持ちでフェスに臨んだのだろうと思ってまたちょっと胸に来たり。

好き嫌いは分かれる個性だとは思いますが、ももクロがじわじわ来つつも一般的には基本ドン引き対象だったところを「かまってちゃんツーマン⇒中野のあかり卒業と改名⇒QUICK JAPAN総特集⇒ザンジバルナイト」という流れの中でどんどんメディア側に味方を増やしていって世の中を引っくり返していったように、彼女たちもきちんとグループとしての有り様が伝われば、ここから先の畳み掛け方如何によっては化けるのかもしれないと思ったり。
アイドル戦国時代と言いつつ、結局今のところ勝っているのはもとよりメジャー事務所所属者のみ。彼女たちのような存在が勝ち切って初めて戦国時代の中で「下克上」が完成するのです。


Carly Rae Jepsen
あら、普通にかわいいじゃないか。いや、普通どころじゃない。すげえ可愛い。
スキップしながらステージ上を移動するんですよ。何それ。「お子様にも安心してお勧めできる」ポップスのシンガーとしてのロールを100%の笑顔で務め切る。女の子がそんな彼女を見て「マミー、私歌手になりたい」とか言うんですよ。

だいたいアメリカで若くしてデビューした女子シンガーはだいたい20歳代半ばを超えるころには立派なビッチに変態完了し、セクシーのインフレを起こして何だかエライことになっていたりするのがおよその常なのですが、彼女は25過ぎるまでカナダ国内でくすぶっていたことが功を奏したのでしょうか。27歳なのに、TiffanyとかDebbie Gibsonとかの80年代ティーンシンガーのデビュー当時のようなキラキラ感があるんです。

そんな感じなんで、アメリカで売れた20歳以上の女子に「萌え」を感じたのは今回初めてかと思って自分の過去の思い出を掘り起こしたところ、デビューしたての頃のLone Justiceのマリア・マッキーに感じた気持ちは、当時はまだ「萌え」の概念すらなかった頃だけど、カーリーちゃんへの今の気持ちに近かったかもしれない。


Cyndi Lauper
いきなり「Money Changes Everything」→「Girls Just Wanna Have Fun」→「When You Were Mine」というどっかで聴いた流れ。と思ったら1stアルバムから30周年なので全曲やるよとのことで本当に全曲やった。
1曲目からステージ降りていくわ、途中でMC挟みつつやたら喋るわ、相変わらずのファンサービスっぷり。MCではどうしてもきちんと伝えたくなったらしく、通訳を呼び込んで日本語訳させるのですがその通訳の方が彼女の来歴やら曲名やら全く知らないっぽい方だったのでとてつもなくチグハグして結局伝わらないまま終了したりしたのですが、結局また次のMCで熱く語ってまた通訳呼び込んでまたチグハグで、みたいな。でも何か彼女の思いは伝わったような気がする。大丈夫。

アルバム全曲の後は近年の「Shine」「Sex Is in the Heel」という歌い上げ系連発の後、ほぼアカペラで日本語の「忘れないわ」絶唱。全く衰えてないどころかむしろ昔より歌上手くなってる気がする。
ただ、その歌い上げ系2曲の時間、大阪では「Goonies」「True Colors」だったことを知り、そっちの方が少しよかったかなとか思ったり思わなかったり。


Earth, Wind And Fire
ここまででだいぶ疲れて、「のんびり座って見ようか」とか言ってたんだけど、一発目「Boogie Wonderland」が鳴り始めた途端そんなこと言っていられなくなる。踊らざるをえない。あのグルーヴは踊ることを強制する。ハーメルンの笛吹きみたいなもんです。フィリップ・ベイリーなんてどこのダイエーで買ったんや的なサマーセーター着てて往年の見た目のような無茶なかっこよさはないのですが、それでも歌い始めたらそりゃとんでもないし、吹いてない時のラッパ隊のステップは痺れるほどかっこいいし。

そもそも「生の彼らの音」という時点で間違いないに決まってるじゃないですか。ラストなんか「本物の生のFANTASY」⇒「本物の生のSeptember」⇒「本物の生のLet's Groove」ですよ。世界にあまたある音楽の中から選りすぐられた「キラーチューン」と呼ばれる楽曲群の中でもトップクラスの殺傷能力を誇る3曲が立て続けですよ。大殺戮ですよ。結果、みんな馬鹿になりました。
隣で「キサナドゥ」現役世代くらいのお姉さま方がとても楽しそうにしておられたので、僕も嬉しいです。


Pet Shop Boys
新譜からの「AXIS」始まりの「One More Chance」まで10分以上ずっと、彼らの姿は映像の向こうにうっすらとしか見えなくて「このまま『The Wall』ツアー現代版みたいなことになるのか」と心配していたら次の「Oppotunities」でようやく登場。歌舞伎町のカラスの巣を擬人化したようなわけのわからない衣装のせいで四十肩並みに手が上に上がらないニールを見てほっこりするのも束の間、ダンサーと映像のシンクロやらものすごい物量で攻める照明やら、とにかく飽きさせない。
遂にはミラーボール的なヘルメットとハット装着というとても頭の悪い格好で出てきて、定位置に立つと上からいくつもの照明が照らしてキラキラしてとても綺麗、「幻想的なバカ」という新次元の概念を開拓するに至る。ていうか開始予定時刻直前に照明バトン下げてまで調整して20分押しになったのはこれのせいか!と多少具合の悪い気持ちにもなりますが、面白いから許す。

面白がっているうちに本編終わり、アンコールの拍手もする間なくダンサー出てきて速攻アンコール編開始、「Go West」「Always On My Mind」という極悪カバーメドレーぶちまけて、でもまだ「West End Girls」やってないから出てくるかなと思ったらまたほとんど間隙を与えず再々度登場、きちんとやることやって終了。
ここまでトータルの情報量の多いライブ知らん。めちゃめちゃ楽しかった。


というわけで、2日目カーリーちゃん以降の4組は全部同じマウンテン・ステージだったのですが、ずっと観ていて「いかに自分の強みの部分を生かしつつ顧客満足度を上げるか」という、サービス業従事者としての心意気を四者四様でがっつり見せてもらえたような気がします。

まあ結論としては、やっぱりフェスは楽しい。