レコード+CDマップ、最新号が例年より3ヶ月遅れましたが、7月に出るよ!

    • -

1986年、「夕やけニャンニャン」番組内でおニャン子クラブメンバーがシングルリリースにあたり「発売日に買わなければファンではない」的な煽り言葉を言い放ったあたりから公然となり始めた状況は現在もはや当たり前となり、2009年には史上初の「すべての1位楽曲が『1週のみ1位』」、つまり2週以上1位を継続した曲が1曲もないという事態になりました。2010年には1位獲得楽曲の全てが2009年同様に「1週のみ1位」だったのに加えて更に全曲が「初登場1位」になりました。1年間52週全曲が「初登場で1週だけ1位」。
昨年は「トイレの神様」が年始の大きなリリースがないタイミングで『初登場1位ではなく』かつ『2週に渡って1位』になりましたが、要するに概ねここ数年はヒットするにしても「初週に売上が集中する」形がごく普通になっているわけです。

そんな中KinKi KidsやB'zの「連続1位記録」を継続している人たちのスタッフ勢はリリース日にも気を遣う必要がありまして、「バカ強いのとカブらない週」を求めて涙ぐましい努力をしていますが、リリースしてみたら意外に2週目の相手が強いことがわかって慌ててキャンペーンを開催したり、いろいろと大変な状況。その他各陣営「リリースした複数種を全種買ったらプレゼント」「1枚買ったら1回応募できる抽選」「予約握手会(1日3回まわし)」等のさまざまな手段を講じては初週売上数の最大化を図ります。

とはいえ「週間チャート1位」はどれだけ頑張っても年間52回しかないので、ジャニーズが相変わらず頑張っていてさらにAKBグループがすごい勢いで勢力拡大している現在、多種多様な陣営が1位を取るのはもう不可能です。そこで各陣営さらに知恵を絞った結果、「『1位』の看板だったら何でもいい」とばかりにデイリーチャートを狙い始め、「フラゲ日に買わなければファンではない」「ファンなら予約して複数種・複数枚買うことが前提」的に、よりファンに忠誠を求める「ランキング餓鬼道」を邁進することになりました。
そしてそれを最大に有効化する作戦が「発売日ずらし」です。

通常日本のCD発売日は水曜日。
オリコンの週間チャートの集計が「月曜開始、日曜締め」であること、「発売日の前日には店舗に入荷してその日のうちに店頭に並ぶ」ことを前提にし、さらに流通が遅れたり僻地だったりしても発売日には届くよう「バッファ」を1日見て水曜日が発売日として設定されたわけですが。
そのバッファを潰して敢えて「火曜日」に発売日を設定することで月曜日にフラゲ可能な状態を作ることが「発売日ずらし」。滅多な僻地でもない限りバッファがなくても発売日前日には店舗に届きますし、水曜発売のCDはリリース後週末を越えて月曜にはかなり売上も下がりますので、他の強敵が「1週間の中で最弱」になっている日に自分は「フラゲで最強」になれるわけです。

これでうまくやった事例が韓国のイ・スンギ
シングル「恋愛時代」をリリースするにあたって本来水曜日の3/7発売が通常のところ3/6に1日ずらし。3/7リリース分には嵐がいますのでまともに組んだら勝ち目はありませんが、その直前の間隙を突き、かつ11種発売&応募特典付きでリリース。結果月曜日付のデイリーチャートで無事19,000枚を売り上げて1位を獲得したわけです。
翌日には7日発売分にごぼう抜きされ、週間チャートでは9位、週間売上も24,000枚だったわけですが、この際週間チャートは大きな問題じゃない。デイリーでもこうやって「オリコン1位」と高らかに謳うことができるわけですから。

ただ、この作戦が必ずしもうまくいくとは限らない。
インディーズで活動中のアイドル小桃音まいの事例。メジャーにグループアイドルがぼろぼろいる中、インディーズのソロというのも大変ですが、日比谷野音のアイドルフェスみたいの観に行ったら彼女が出てて「ニューシングルでデイリー3位を狙います!」と宣言。前シングルが限定数発売という形でデイリー最高位6位まで持ってきたことを自信にしつつ、このシングルは数量限定でない代わりに発売日をずらしてきました。更に予約イベントも相当に厚く開催してファンの複数買いによる積み上げも狙って。
が、蓋を開けたら月曜付デイリーチャートは19位止まり。週間チャートでも24位。いくら作戦を発動しても根本のファン層を固め切れていないと意味がないという現実をむざむざと見せつけた残酷な事例です。
それでも彼女、ニューシングルも7/3火曜日にリリース日を設定し、前回は3種発売だったのを7種発売にグレードアップして再挑戦。まだ心は折れていません。

何としてでも「肩書き」がほしい人には有効な作戦ではあるのですが、全商品火曜発売とかにしたら作戦の意味なくなりますし、メジャーレーベルの場合は全部水曜発売にしておけばその分流通コストもまとめられますので、この趨勢がメジャー化することは当面ないかとは思います。それでも今後もこの作戦をとったミュージシャンがいた場合概ね「必死」であることは間違いありませんので、見かけたら温かい目で見守っていただけると幸いです。