「アイドル戦国時代」とか語りつつも80年代的価値観と己の趣味で言ってしまえば、もう一度大滝詠一を現場に引っ張り出せたアイドルが「勝ち」だと思っていたりするわけですが、乃木坂46の"ぐるぐるカーテン"は、フィル・スペクター的なアレンジを「ウォール・オブ・サウンド」にならない程度にライトに引用していて、正直聴いていて非常に耳に心地よいのは事実でして。

そして、何度か聴いていて思ったのは歌詞の方、これ女友達との教室での風景の歌なんですけど、こういうふとしたシーンを切り取って1曲に仕立てた秋元康氏の力におののくと共に、歌の主人公と友達の関係性の表現を「仲のいい友達」とものすごくあっさり済ませて、あとはその行為で自分がどう思うか外にどう映るかに終始した内容から、中高生の女の子によくある「刹那的な友達との関係性」を揶揄しているようにも聞こえて何とも言えない気持ちになる。
「うしろゆびさされ組」とか、中学生の頃到底モテたとは思えない風貌の男が書いたと考えると相当底意地悪い歌詞だし、前科はある。それを将来嫁になる人間に歌わせているという事実で趣深ささらにアップ。

乃木坂、少なくともAKB48のどこまでもライトな空気と違って少しぬめりのある歌詞で気になるんですが、ガーリーさと共にこういう歌詞の路線で差別化しながら今後も行くのだろうか。

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吉川友 / One for YOU! (Album)

デビュー曲はまあまあ悪くないなと思いつつ、それ以来一切聴いていない状態でさして期待もせずアルバム聴いてみたら、大変によくてびっくりする。
まず掴みの一発目で先行シングル"こんな私でよかったら"がすごい名曲。サカノウエヨースケ作詞作曲。最近名前聞かないと思ってたらこんなところにいた。いい仕事。2曲目"Sweetie"からデビュー曲"きっかけはYOU!"までの3曲の流れは本当に聴いていてワクワクする。その後も緩急付けつつも間延びせず、アレンジャーが全体的にほぼ同一人物が手がけていることもあって、全体に統一感があってすごく聴きやすい。本当によくできている。

彼女はMilkiy Wayの時から大人びた雰囲気はあったけど、19歳になり新垣結衣系統の正統派美人になりました。見ている分には大変に素敵なことなのですが、ただ「19歳」「正統派美人」という時点で今のこの世の中で「アイドル」としてこれから更に売っていこうというのは正味伸びしろという意味ではかなり厳しいのではないでしょうか。特にソロはただでさえ難しいのに。
ハロプロではあるけれどユニバーサルに出向中という身を生かして、自由度高くやっていっていただきたいと思います。

PV、YouTubeが埋め込み無効になってたのでこちらで。