ナタリーの「“応援ソング”のルーツと変遷を探る」の補足とかのこと

@JAM EXPOの話をしようと思っていたのですが、公開されたのでこっちの件を先に。再び音楽ナタリーで原稿書かせてもらいました。

“応援ソング”のルーツと変遷を探る

桜ソングの時はブログでもある程度情報固めていましたし、言うても歌詞やタイトルをキーにして範囲を具体的にすることができたのですが、今回はアイデアとしては持っていたものの趣味での事前調査も断片的で、かつそこまで具体的なキーで拾えないものも多く、正直なところ非常に難儀しましたが何とか形にしてみました、という感じです。

原稿に組み上げる前のメモには他にもいろいろ書いていたので、そこらへんを多少補足的に。

前回に音楽ナタリーで「桜ソング」について書いた時には、1970年代から10年単位で切る形にして、今回もそれで行こうと思っていたのですが早々で断念。時代の流れというよりはきっかけとなる曲があって、それによって動いている感じだったため、各章でキーとなり得る曲を挙げる形で進めることにしました。

その「キーとなり得る曲」も相当挙げたのですが、結果として原稿内に反映しなかったのが以下のような楽曲。

水前寺清子「365歩のマーチ」
ザ・フォーク・クルセダーズ「青年は荒野を目指す」
青い三角定規「太陽がくれた季節」
THE STAR CLUB「Hello,New Punks」
渡辺美里「My Revolution」
永井真理子「ミラクルガール」
爆風スランプ「Runner」
槇原敬之「どんなときも。」
SUPER BUTTER DOG「サヨナラCOLOR」

正直、どの曲をキーとして置くか、というところも1987年の2曲とオリンピックのテーマソング以外は言い様によってはどうとでもなりそうではあったのですが、いくつかこういう「点」を挙げたうえで、自分の中で一番妥当と判断したところに落とし込んだ次第。

で、時代で流れを追おうとしていた時、各年のヒット曲から応援ソングを拾っていたのですが、1987年以降完全に市民権を得た応援ソングがヒット曲の中に相当数見受けられるようになります。

1989:Runner / 爆風スランプ
1989:Diamonds / PRINCESS PRINCESS
1990:夢を信じて / 徳永英明
1990:愛は勝つ / KAN
1991:それが大事 / 大事MANブラザーズバンド
1991:PIECE OF MY WISH / 今井美樹
1981:どんなときも。/ 槇原敬之
1993:負けないで / ZARD
1994:がんばりましょう / SMAP
1995:TOMORROW / 岡本真夜
1995:ガッツだぜ!! / ウルフルズ

しかしこの流れが1995年以降、数はそれなりにありますがこと年間トップ100レベルのヒット曲に限ると、応援ソング比率が相当落ちているんです。これ何かと思って調べてみても確とした裏付けが取れなかったので本編からは外したのですが、正直小室プロデュースの曲ばっかりヒットしたせいじゃないのと思ってます。
小室プロデュース楽曲って思っていた以上に応援ソングが少ないんですよ。小室哲哉作詞曲で明確にそうと言えるのは、確認できた限りではH Jungle with t「WOW WAR TONIGHT」と安室奈美恵の「Chase the Chance」くらい。hitomiの楽曲は多少応援度高めですが、それはhitomi自身が作詞に噛んでいるためで。その流れで小室プロデュースを離れて「LOVE2000」を出すわけです。

あと、死ぬほど調べたけど結局「時代の流れ」としては可視化できなかったのが「世界で一つだけの花」以降の「ありのまま」型応援ソングの流行。2003年以降で同曲と近しい構造を持っていると判断できたヒット曲はAqua Timez「虹」と竹原ピストル「よー、そこの若いの」だけでした。

そういう感じでこの原稿のようになったわけですが、何とかして入れられないかと思って努力したものの諦めたのが、槇原敬之の変遷。
1990年の「どんなときも。」では「絶対ゆずれない夢」に向かって「迷い探し続ける日々」だったのが、1992年の「遠く遠く」では「力いっぱい輝ける日」のために努力はしていても「いつでも帰ってくればいい」と言われて笑顔になり、それが2002年に「世界に一つだけの花」になる。
1992年から2002年の間の歌詞については改めて見てはいませんが、彼のタイムラインと精神的な変化が結構リンクしているのではないかと思っていたり。
ただ、そこにぶっ込んでいくとそれだけで長文になり、本編置いてけぼりになりそうな気がして断念しました。

暇なときに調べてみる。たぶん。

NOCTURNAL BLOODLUSTのこと

NOCTURNAL BLOODLUSTというバンドがいるんですよ。
2016年のVisual Japan Summitで彼らを観て、ラウド系ベースの死ぬほどガッキガキのヘビーな音に痺れたのですが、他人に彼らを伝えるとき「半裸で血まみれのマッチョが口でいろんな変わった音を出すバンド」としか説明のしようがないことに少し困ったりもしたのですが。

そのNOCTURNAL BLOODLUST、今月の頭にメンバーが大麻で逮捕されて、現在活動休止中なんですけど、その直前に逮捕されたのが大物だったこともあり、さして大きなニュースにはならなかったのですが、バンドのそこに至るまでの流れがそもそも随分酷くて、その時身内でちょっと話していたのですが、その件を改めて。

逮捕されたメンバーというのが、新たに加入したばかりのギタリストだったのですが、じゃあ前のギタリストは何で脱退したのかというところを含めて時系列で追うと、なかなかの地獄っぷりで。

2018/10:
所属レーベルの賃金未払いおよび社員による使い込みが発覚し、ギター2名が脱退発表
 ↓
2018/12:
脱退前の最終ライブ開催
 ↓
2019/04:
新ギタリストの加入と新体制での初ライブの8月開催決定
 ↓
2019/07:
新音源発表。脱退メンバーをディスりまくる歌詞でファンを困惑の海に叩き落す
 ↓
2019/08:
新ギタリストが大麻取締法違反容疑で逮捕される
 ↓
2019/08:
新体制での初ライブが逮捕に伴ってキャンセルに

「新体制での初ライブが逮捕に伴ってキャンセル」というのがもうなかなかのパワーワード状態。というか、ファンにとっては何の拷問なんだレベルの状況であり、本当に何とかならないのかと思うのですが。

V系界隈の大麻・薬物関連の逮捕って、その後の対処はいろいろあるわけで。
BUCK-TICKは1989年に今井寿がLSD食って麻薬取締法違反で逮捕されましたが、執行猶予期間の8か月後に東京ドームライブで復活、むしろこのライブがBUCK-TICKを世間に知らしめる結果となりました。

L'Arc~en~Ciel1のSakuraは1997年に覚せい剤取締法違反で逮捕。結局メンバー交代しましたが、その復活の際の新曲とライブが彼らの「どメジャー化」のきっかけになったりもして。

lynch.はベースの明徳が2016年に大麻取締法違反で逮捕されたものの、サポート入れつつ活動を継続し、2018年には明徳が復活して活動を継続しています。

そんな感じで、メンバーの逮捕はその後のブレイクのきっかけにもできたりするので、NOCTURNAL BLOODLUSTにも頑張ってほしいのですが、正直なところ彼らの場合は業が深すぎる。

ナンバーガール@日比谷野音のライブのこと

昨晩はライジング組の皆様には大変申し訳ないのですが、ナンバーガール@日比谷野音。しかもBエリア1桁。幸運を相当使い込みました。

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とりあえず会場入ったら売店で酒を買って飲む。向井秀徳関連のライブにはシラフでは臨まないというのが私なりの礼儀です。
とはいうものの、実はナンバーガールのライブは過去に観たことがありません。彼らの全盛期は1999年から2002年ですが、私が結婚したのがちょうど1999年でして。その後だんだん適当になっていきますが、そこらへんいろいろ慎重になっていた時期なわけです。そういうことですよ。

そんな中でも音源はわさわさ買っておりまして、「何かとんでもねえのがいる」という話でインディーズの「SCHOOL GIRL BYE BYE」を買い求めて聴き、「こいつら頭おかしい」と思い、メジャーデビューするってんでそのシングル「透明少女」を聴いて「こんなイビツなまんまメジャーで出すのか」とビビり、その後音源を追って行くとイビツなまんま録音がよくなっていってそのキレキレが馬鹿みたいにわかりやすく聴こえてきて、かつ初期は一応「Aメロ→Bメロ→サビ」という一般的な体の曲だったのがどんどん解体されていってどんどん独特すぎる感じになっていき、結局そのままバンドごと解体して、そっちに向かった音楽的ベクトルでもってZAZEN BOYSの「MATSURI SESSION」に至る、という認識。

そういう、音源の流れだけ把握したまんまのライブなので、「これ初期と後期の曲混ぜたらあかんのとちゃうか」とか思いつつ向かったのですが、そこは大変に私が浅はかでした。今のフィルターに通った結果、1曲目「大あたりの季節」からラスト「トランポリン・ガール」までもうガキガキでパキパキ。敢えてどメジャーな曲を始まり終わりに置かないところも何となく彼ららしいとは思いますが、どの曲もキレキレなので、転調やブレイクがもうアホみたいに気持ちいい。恐ろしいレベルで快感原則に則ったプレイが続くもんですから、もう「だあ!」とか「うあー」くらいしか言葉が出ない。人を馬鹿にさせる音楽。

あと、ライブ観てようやくわかったのが、向井秀徳とひさ子さんのギターの役割分担。見られるもの見ても決してどっちかがリードでどっちかがリズムという分担ではないわけで、どうなってるんだろうというのが積年の疑問だったのですが、生で2時間観ておよそ理解できた。向井秀徳が「骨格と勢い」担当で、ひさ子さんが「表情」担当。だいたいそんな感じだと思う。だからもうひさ子さんのプレイを目で見るのもものすごく楽しくて。

そんな感じでもうあっという間の2時間。そもそも20年前にこういうバンドが存在して、メジャーで活動していたことが奇跡であり、それがまた活動を再開したことも奇跡であり。もう金儲けでも何でもいい。
一点思ったのは、2時間でもあんだけヤバかったのが、本来ライジングサンで復活初公演のはずだった60分のライブ。どういうセットリストを予定していたのか、考えるだけで震える。公開してほしい。割と本気で。

SOMMER SONIC 2019のこと

今年のサマソニは1日目のチケットしか取れなかったのでそれで行ってきました。
実は先週ずっと体調絶不調で、精を付けようと無理くりお昼に肉と米を食ったら、消化に全エネルギー持ってかれる感じになって午後全く使い物にならないとか。
今週に入って多少マシにはなったのですが、スロースタート&深夜の部は諦める形。涙を飲んで。

とりあえずロビー入ってどうしようかと思っていると、向こうの方からアイナ・ジ・エンドの声が聞こえてきたのでフラフラとBiSHへ。あの声は本当に心に来る。
何回か観てはいるのですが、今回思ったのは「越えていく」アイドルグループはみんな「絵になる」のかもなあ、ということ。
Perfumeも、ももクロも、BABYMETALもそうだったような気がして。その場にいるだけで何とかなってしまうようなプレゼンスというか。すげえ薄らぼんやりした感想ですが。

で、本当は神様、僕は気づいてしまったを観ようと思っていたので、最後だけちょっと覗きに行く。
所謂覆面バンドってビークルやFACTのようにライブの時は面出しするタイプと、MAN WITH A MISSIONのように完全にそういう体でやるタイプと2種類いますが、彼らはどっちだろうと思って。
結果としては後者。音や技術は間違いないんだけど、マンウィズ観た時と同じく「あなた方は本当にそうしたくてそうしてるんですか」と聞きたい気持ちになるので、あんまり気持ちよく聴けない。

次、Little Glee Monster。一度観ておかなくてはと思い。
この子達本当にガチだな。すごいわ。一番心に来たのが最後にやった新曲「エコー」。
彼女たちはナベプロのオーディションで集まったわけですが、その企画のベースにはドラマ「Glee」とか、Pentatonixのヒットとか、アメリカでの動きがあったと思っています。
ただ、それをそのままやらず徹底的にドメスティックに翻訳しまくったことが、彼女たちの成功の要因だとも思うのですが、その「エコー」は、よもやゴスペルと思うほどに「太い」音。
ようやくここに来て翻訳する元の、アメリカに接近していくのかと。だとすると、彼女たちはまだまだ未来にやるべきことが山ほどあるわけで、底が見えない、すごく面白い。

スタジアムに移動してYUKI。2011年に初めてROCK IN JAPANで観て、あんまり感銘を受けたのでその後の横浜アリーナと東京ドームの単独にも行ったのですが、そこから久々に。
ROCK IN JAPANの時どうだったっけと思っても思い出せないのですが、横浜アリーナと東京ドームの場合、演出含めてものすごく作り込んだライブだったので、今回ものすごいユルユルの、フェスならではの流れに笑ってしまう。かといってダメなわけでもなく、演奏も歌もさすがに存在感。ただ、何か彼女すごくご機嫌そうで、その楽しそうな笑顔やらMCだけでもう満足。よし。妖精。

Weezer。2016年のサマソニ以来。
異常なほどに初期というか1stアルバムに寄せた選曲、「Africa」「Take On Me」のカバー。つまり俺にとっては最高。リバースのMCも「オハヨウゴザイマース!」「イタダキマース!」から始まり、「ゴチソウサマデシター!」で締める快調っぷり。もうね、本当にいいバンドです。

The 1975。今回の主目的。
だって、彼らのアルバム俺いまいちわからないんですよ。1曲1曲は間違いないものもあるんだけど、アルバムを通すとそのジャンル渡りすぎな音、そして粒度やフォーカス等も、曲によって違いすぎていて全体像がよく掴めないというか。で、ライブであればその全体像がシャープになるのではないかと思って。
結論として、何となくですが理解できたような気がします。少なくとも「アルバムの全体像」とか気にしている方がアホだったなと。

ジャンルとか一切気にせず出てくる表現のベストなアウトプットとしてのアレンジと、その楽曲同様、カラフルなライトと、時折モノクロにもなるライブ映像、表示されるメッセージ、マイクスタンドはあるのでコーラスと思っていたら実際ほとんどコーラスなどせず踊りまくるだけの黒人女性2名。フロントのマシューはRIDEの「Nowhere」ジャケットのTシャツを着て、パンクスのような眼をして歌う。

情報過多の時代におけるコラージュ的な表現と言ったら身も蓋もないけれど、知り得る過去と今を全部飲み込んで吐き出したような音であることは間違いなくて。
自分がわからなかったのは結局昔のように「ジャンル」や「ジャンルとジャンルの順列組み合わせ」でもって理解しようとしていたからだなあ、と。耳の老眼的なもんですよ。
ここで得た感覚が、今後の音楽を聴く時の一助になればと、切に願います。

Two Door Cinema Club。
その流れならB'z観ろよって話ですし、彼らは恐らくサマソニ最多出場の外国バンドなんでまた来るだろって話なのですが、どうしても気になって。
先日リリースされた彼らの新作が、これまでも徐々にそっち方面に向かってる感はあったとはいえ、今回で謎のメジャー感が遂に臨界点を越えたといいますか、過去のインディポップ然とする空気を完全に払拭してしまった怪作となっておりまして、これ何があったんだという思いで。
こういう音の変化がある場合、だいたいメンバーが音楽的な相違で揉めて脱退してフロントマンだけが残ったみたいな、Panic At The Disco的な展開が通常なのですが、調べたらオリジナル・メンバー3名健在。よくわからない。

新作からの曲でスタート。新作のビジュアルイメージ通り原色だらけの映像と共に。ゴージャス。そして過去作の曲もそのゴージャス感できっちりアレンジされて出てくるもんですから、流れとしては違和感ないけど個人的感覚としては違和感しかないという、大変やるせない気持ちに。
それでも聴き続けているとだんだん面白くなってきて、これはこれでありなのではないかという気持ちになったので、よしとする。

土曜の分はチケット取れなかったので、今日は出かけた後ライブ・ビューイング見ていたのですが、フジロックのようにステージ丸々をフル尺で見せるのではなく、一部を除いては冒頭の数曲だけでどんどんステージを切り替えていくスタイル。

これはもうライブ・ビューイングを何の手段として捉えるか、その手段として何が最適解かということを各運営がどう考えているかの差異ですし、数曲だけであってもタダで見せてくれてありがてえとは思うのですが、何かYouTubeでMV公開する際にフル尺で公開するか、ショートVer.で公開するかの違いに非常に近いと思いました。
で、SMASHがフル尺でクリエイティブ・マンがショートVer.というのも、何となくそんな感じがする。

オリコンチャートを改めて眺めてみたこと

ハロプロのBEYOOOOONDSが、デビューシングルでオリコンチャートの1位になったという報を聞き、最近ちゃんと見ていなかったこともあって久々にまじまじとオリコンチャートを眺めてみました。

ジャニーズとかAKBとかあからさまに強いのはいない週ですが、合算チャートで三代目J SOUL BROTHERSに勝ってるのにビビる。三代目のファンにとっては相当にガチで「誰やねんこいつら」状態だったと思われます。

が、ビルボード・ジャパンのチャートの方を見てみると三代目の勝ちで。
2社で順位が違うのには、ダウンロードやストリーミングの換算率の差異とかもあるのでしょうが、この場合一番大きいのはCD複数種販売をどうカウントするのかのポリシーの部分ではないかと思います。
三代目はCD+DVDとCDのみの2種、それもCDの内容に違いなし。一方BEYOOOOONDSはDVD付きが映像違いで3種とCDのみがカップリング曲違いで3種の合計6種。DL販売はありますが、それでもまだ「CD売らんかな」体制を維持しています。

で、久々に合算チャート見て「CD」「DL」「ST」の表記等、表記がいろいろ工夫されてきていて便利。RADWIMPSのようにDLのみでチャートインしてる曲はオリコンではこっちのチャートで初めてわかることですし、現在もストリーミングに楽曲提供していないミュージシャンが誰かということも一目でわかります。
これアルバムチャートの方にも付いていて、こっちはこっちで「まだCDしか出していないのがけっこういるっていうか、嵐はまだCDだけでミリオン取っちゃうんだ」という、現代ならではの感慨にふけることができます。

ちなみにオリコンにはストリーミングのみのチャートもありますが、こっちはちょっと前まではあいみょん無双状態だったのが、ここ半年でofficial髭男dismが凄い勢いでまくりに来ていることがわかります。そういう「勢い」はこのチャートが一番わかりやすい。

とりあえず今回の最大の収穫は、確認のために見たBEYOOOOONDSのWikipedeiaのページが今の段階でもう気が狂わんばかりに内容が微に入り細に入り状態で詳しいとわかったこと。すごいオタが付いているのでしょうが、これこの後活動が活発化していくとどうなっていくのか、想像しただけで恐ろしくてたまりません。

玉光堂がここに来て微妙に積極的なこと

山梨県甲府市の駅ビルに入っていた新星堂が7/28に閉店。ただ珍しく閉店時に「次もCD店が入ります」との旨がアナウンスされていました。

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どの店が入るのだろう、タワー・HMV・山野楽器はありえない、BIGは現在新星堂と同じRIZAPグループなのでそういう形で入ることは考えらない、さてどこだろうと思っていたらまさかの玉光堂でした。
他も調べてみたら奈良県生駒市のイオンモール登美ヶ丘店の新星堂が6月末で閉店した後に入店したのも玉光堂で。

玉光堂はずっと北海道のみで運営していて、バンダレコードをグループインすることで本州にも店舗網を広げる形にはなりました。それ以降概ね本州での新店はすべてバンダレコード名義だったのです。
それが2014年初めて玉光堂ブランドで本州・姫路市に新店舗を出したのですが2年で速攻閉店。それ以降そういう形で出店することはまたなくなり、もう本州に玉光堂が登場することはないのではないかと思っていたのですが、まさかこのタイミングで。

玉光堂は北海道の店舗がけっこうな勢いで閉店、先日には元運営企業が特別清算開始命令を受け、これからどうするんだと思っていたら、まさかの攻めに転じる展開。
新星堂から受け継いだ2店舗の他にも、2017年に一度撤退した新札幌にこの5月に改めて新店舗を出したり、何故かここに来て張り切っています。

グループのバンダレコードも、ここんとこしょんぼりしていたかと思ったら、10月下旬にグランドオープンする新ショッピングモール「テラスモール松戸」に新店舗をオープンすることが決まったり、微妙な攻めっぷりを発揮しています。

とはいえバンダレコードとしては、イオン所沢店に入っている本店が9月末のイオンの全館閉店によってどうなるかわからなくなっていたり、先行きは明るくありません。ていうか明るいところなんかもうない。

ポップしなないで「禁じられてはいない遊び」のこと

The White Stripesを初めて聴いた時はそりゃビビったもんです。何この異常に生々しいの。
で、この音は完全にギターとドラムと歌しか鳴ってない、ということを理解して何となく腑に落ちました。パーツが少ない分それぞれの音はその曲での存在感を増し、メロやプロデュース含めてぱちっと合った時、こういう凄まじい音塊が生まれるのだと。

ポップしなないでを初めて聴いたのはこの5月の下北沢のサーキットイベント、サウンド・クルージング。
そのステージを目の当たりにして、まさにThe White Stripesを思い出していました。音楽としては全く別の種類ですが、そのあんまりな生々しさは本当にそうで。
ピアノ&ヴォーカル女子と、ドラム&コーラス男子の2名。同じ最小構成で、曲はきちんとポップなんだけど、いちいち出てくる音にゾクゾクする感じで。

ライブ観た直後に1枚だけ店頭にあった一般流通盤を買い求め、聴いてみたのですが、ちょっと足りない。またライブが観たい。と思っていたところにリリースされたのが新しいこのアルバム
うん。前の盤より生々しい。いい。
正直、女子の生々しいのって「すごいな」とは思いつつあんまりハマったことないんですよ。戸川純とかCoccoとか。女子特有の生々しさは私のような無粋な男にはわからん部分がきっとあるからだろうなあ、と思っているのですが、ポップしなないでもそういう感じのようで、でも全く過去の人たちのような気持ちにならないのは、作曲が女子で作詞の方が男子という構造のためでしょうか。

そもそも馬鹿売れするタイプの音ではないと思います。
でも一度届くべき人に届いたら、その人はずっとファンで居続ける、そういうタイプの音楽です。だからまずはできるだけ広まって、気付く人をがんがん増やしてほしいと思います。
しかし、MVにU-zhaanが出ている理由がまったくわかりません。

BAROQUE「PUER ET PUELLA」のこと

8月6日、大阪ZEAL LINKも閉店し、ZEAL LINKという屋号が姿を消しました。
ヴィジュアル系のバンド、いいバンドは今もいますし、新人バンドも出てきています。が、なかなか「元々ヴィジュアル系好き」なコミュニティの外に出ていけるようなバンドがいない、というか、外に発信できるメディアが既にほとんど失われてしまい、全体としてのパイはどんどん小さくなるばかり。そして専門のCD店も閉店を余儀なくされると。

そんな中でもきちんと前向きなバンドは、音楽としても非常に前向きな作品を出し続けています。
そして、今回のBAROQUEのニューアルバムが、他のジャンル込々で考えても相当に出色の、傑作と呼んでいいレベルの作品出してきました。
2001年に活動開始したけっこうなベテラン、ダークでゴシックな世界観で出てくるバンドが多い中、カジュアルな衣装と薄いメイクで「オサレ系」と称されるバンド群の元祖的存在となったバンドですが、2004年に一度解散。4人が2人ずつ分裂する形でkannivalismとboogiemanという2つのバンドで活動していましたが、2011年に再始動。が、元boogiemanの方のメンバーが次々脱退し、結局は元kannivalismの2人がBAROQUE名義で活動を継続しています。

デビュー当時は見た目の方でいろいろ言われていましたが、音楽の方ではミクスチャー的な匂いをさせつつそこここに他の洋楽的なテイストをぶっ込んでいくスタイルで、個人的にはそこそこ面白いなあという程度だったのですが、それくらいだったのでその後ほとんど追っていなかったのですが、2015年の前作「PLANETARY SECRET」がやたらいいという話を耳にして聴いてみたら、シューゲイザーとポストロックを掛け合わせたようなトラックの合間をV系らしい情緒的なメロディーが流れる、いろいろな意志を感じるアルバムでして。

そこから4年経ってのニューアルバム「PUER ET PUELLA」。もう前作のシューゲイザーとかポストロック的な面もところどころあるっちゃあるのですが、もっと消化が進んで何か特定の音楽ジャンルでざっくり例えるのも難しくなってきて、でもあからさまに音楽としての完成度は高く、かつヴィジュアル系というカテゴリに身を置くことの矜持というか、元々の部分もきっちり残している。
音楽的なチャレンジはそこここにありつつ、全体としてすごくバランスがいいという、実はなかなかできんことをできている。

本当にすごくいいアルバムなので、何とかして「『元々ヴィジュアル系好き』なコミュニティの外に出ていける」ようになればいいなと思うのですが、ことプロモーションの方針とか価格とかを見るに、あんまりそのつもりもないようで、正直すごく残念。つうか高えよ。

明大前駅のビルボードのこと

京王線の明大前駅の改札を出たところにビルボード広告があるんですよ。
そこはいつ見てもだいたい新しいCDのリリース告知が掲示されていたんです。
こんな感じで。
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それが先日降りた際に見たらこうなってました。聞けば随分このままだそうで。
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こういう形の「マス広告」ですら削られる時代。
ああ、こういうところも変わっていくのだな、という感慨。

TSUTAYAの上半期の動向をまとめてみること

半年ごとくらいでTSUTAYAの状況を総括していこうと思っていたのですが、気が付いたらもう8月でした。
なので、今年の7月までの閉まりっぷりをとりあえず羅列。

01/06 TSUTAYA 幸手店(埼玉県幸手市)
01/06 TSUTAYA 上尾原市店(埼玉県上尾市)
01/14 TSUTAYA 上尾駅前店(埼玉県上尾市)
01/14 TSUTAYA さいたま新都心店(埼玉県さいたま市中央区)
01/14 TSUTAYA 砥部店(愛媛県伊予郡砥部町)
01/20 TSUTAYA 新小岩店(東京都葛飾区)
01/20 TSUTAYA WILL 久万の台店(愛媛県松山市)
01/27 TSUTAYA 大倉山店(神奈川県横浜市港北区)
01/31 TSUTAYA 宇都宮鶴田店(栃木県宇都宮市)
01/31 TSUTAYA 仁戸名店(千葉県千葉市中央区)
01/31 TSUTAYA 祖師ヶ谷大蔵店(東京都世田谷区)
01/31 TSUTAYA 高須店(高知県高知市)

02/03 TSUTAYA フジグラン十川店(香川県高松市)
02/10 TSUTAYA MINANO分倍河原店(東京都府中市)
02/11 TSUTAYA 醍醐店(京都府京都市伏見区)
02/11 TSUTAYA JR野田店(大阪府大阪市福島区)
02/11 TSUTAYA フジグラン神辺店(広島県福山市)
02/17 TSUTAYA 学芸大店(東京都目黒区)
02/17 TSUTAYA 武蔵中原店(神奈川県川崎市中原区)
02/24 TSUTAYA 南宮崎店(宮崎県宮崎市)
02/28 TSUTAYA 天神駅前福岡ビル店(福岡県福岡市中央区)(移転)
02/28 TSUTAYA 名護店(沖縄県名護市)

03/03 TSUTAYA すみや富士中央店(静岡県富士市)
03/03 TSUTAYA フジ西宇部店(山口県宇部市)
03/06 TSUTAYA 京王稲田堤店(神奈川県川崎市多摩区)
03/12 TSUTAYA フジグラン宇部店(山口県宇部市)
03/17 TSUTAYA ときわ台店(東京都板橋区)
03/17 TSUTAYA 桃山店(京都府京都市伏見区)
03/17 TSUTAYA 箕面牧落店(大阪府箕面市)
03/20 TSUTAYA 園田駅前店(兵庫県尼崎市)
03/30 TSUTAYA BOOK STORE 神谷町駅(東京都港区)
03/31 TSUTAYA 旭川神居店(北海道旭川市)
03/31 TSUTAYA 登別店(北海道登別市)

04/14:TSUTAYA 岩槻店(埼玉県さいたま市岩槻区)
04/14:TSUTAYA 大船店(神奈川県鎌倉市)
04/30:TSUTAYA 那の川店(福岡県福岡市南区)

05/06:蔦屋書店 上野店(東京都台東区)
05/06:TSUTAYA 南陽通店(愛知県名古屋市南区)
05/06:TSUTAYA 学園都市駅前店(兵庫県神戸市西区)
05/06:TSUTAYA フジグラン川之江店(愛媛県四国中央市)
05/08:TSUTAYA 衣笠店(神奈川県横須賀市)
05/12:TSUTAYA フジグラン今治店(愛媛県今治市)
05/19:WonderGOO TSUTAYA QLuRi川越店(埼玉県川越市)
05/31:TSUTAYA 東大和店(東京都東大和市)
05/31:TSUTAYA 蒲郡三谷店(愛知県蒲郡市)
05/31:TSUTAYA 野田川店(京都府与謝郡与謝野町)

06/02:TSUTAYA フジ垣生店(愛媛県松山市)
06/09:TSUTAYA 姫原店(愛媛県松山市)
06/16:TSUTAYA つくば桜店(茨城県つくば市)
06/16:TSUTAYA 川越店(埼玉県川越市)
06/20:TSUTAYA 姫路車崎店(兵庫県姫路市)
06/23:TSUTAYA フジグラン北浜店(愛媛県八幡浜市)
06/30:TSUTAYA 東池袋店(東京都豊島区)
06/30:文苑堂 TSUTAYA 上飯野店(富山県富山市)
06/30:蔦屋書店 フジグラン葛島店(高知県高知市)
06/30:TSUTAYA AVクラブ 鷹尾店(宮崎県都城市)

07/07:蔦屋書店 フジグラン高知店(高知県高知市)
07/15:TSUTAYA 二子玉川駅前店(東京都世田谷区)
07/21:蔦屋書店 フジグラン野市店(高知県香南市)
07/31:TSUTAYA 田子店(宮城県仙台市宮城野区)
07/31:TSUTAYA 浦和店(埼玉県さいたま市浦和区)
07/31:TSUTAYA 成増駅前店(東京都板橋区)

年間100店ペースを継続中です。
この半年で最も目立つのは、愛媛拠点のスーパーフジの子会社フジ・TSUTAYA・エンターテイメントの店舗の大量閉店。これだけ減ってもまだ15店舗ほどあるのですが、愛媛県高知県は相当に間引かれてしまいました。
その他、浦和や二子玉川のように、新たに直営の「蔦屋書店」「蔦屋家電」がオープンしたものの残存していた従来型のTSUTAYAが遂に消されるというパターンも。

開店店舗もないことはないのですが、
04/25:ヤマト屋書店 TSUTAYA BOOKSTORE 仙台長命ヶ丘店(宮城県仙台市泉区)
04/25:TSUTAYA 天神ショッパーズ福岡(福岡県福岡市中央区)
06/28:TSUTAYA QLuRi川越店(埼玉県川越市)
06/28:TSUTAYA BOOKSTORE 宮交シティ(宮崎県宮崎市)
07/01:TSUTAYA 綾瀬駅前店(東京都足立区)

TSUTAYA BOOKSTORE 仙台長命ヶ丘店以外は全部、閉店した店舗のそばに移転の形でオープンしたもので完全新規店ではなく、仙台長命ヶ丘店も書籍とゲームのみの取り扱いで、CD/DVDはレンタルも販売もなしです。

また、閉店という形ではないですが、5月6日にTSUTAYA EBISUBASHI、5月10日にTSUTAYA名古屋栄店でレンタルが終了するなど、大都市圏の中心地にある大型店では着々と特にレンタルは減っています。
東京の都心でレンタルが残っているのは、上野店が閉店したので、渋谷店と、新宿は歌舞伎町の雑居ビル、池袋は西口のロサ会館の店と、それくらい。名古屋は名駅西口の店だけで、大阪は阿倍野店のみ。
これ確実に大都市圏の立派な場所の高いテナント料を嫌っています。レンタルはもうそれだけのアガりの期待できる商売ではないということでしょう。

これまでも、こういう動きはただ「不採算だから渋々切っている」わけではなく、ある程度業転の意図を持ってやっているということは言ってきましたが、かといって、Tカードもなかなかうまくいかなくなってきたし、図書館運営等のBtoB事業もこれまでの状況や拡大のスピードを見て、レンタル全盛期の頃に匹敵するような規模のビジネスになれるとは今のところは思えない。

ので、そろそろ赤が出ない店であれば維持も考えるという感じで、閉店ペースが今後多少緩むのではないか、というのが最近の見立てです。